渡辺 ヒデカズ

【陶磁器】
渡辺 ヒデカズ(わたなべ ひでかず)
蜩窯(ひぐらしがま)
-上益城郡-

 

1953年熊本県生まれ
大学卒業後、備前焼作家・伊勢崎満さんに師事
その後、沖縄へ移り島武巳さんのもとで南蛮焼を学ぶ
1984年に北海道で開窯
1986年からは熊本県上益城郡御船町吉無田に拠点を移し、全国で個展などを展開する

渡辺 ヒデカズ

車1台がようやく通る幅の砂利道をひたすら進むと、陶芸家・渡辺ヒデカズさんの「蜩(ひぐらし)窯」が見えてきます。通りがかりに立ち寄れる場所ではないにも関わらず、併設されたカフェは平日でも賑わっています。
渡辺さんは北海道にいた大学生時代、アルバイトで土器の発掘作業を手伝いました。「縄文土器の素朴さにおもしろ味を感じて」。
卒業後に岡山で備前焼、沖縄では南蛮焼を学び、北海道で念願の窯を開きましたが、故郷の熊本に窯を移します。窯の外で蜩が鳴いていたことから“蜩窯”と命名したそうです。
近年、焼き物で絵を描くという新しい技法に取り組んでいます。陶芸用の粘土を乾燥させて粉状にしたあと、色を調合した粉を型紙の上からカンバスとなる板の上に振りかけます。粉を叩き付けて密着させて焼くと、砂絵のように立体感のある質感が生まれます。“陶画”と名付け、宇宙やアフリカの原野など今までに影響を受けた光景が描かれています。ギャラリーで展示販売されているアクセサリーや器と同様、アフリカンアートを思わせる大地の力強さと生命力を感じます。
渡辺さんは作品制作に使う道具も作り方もユニーク。ロクロも使いますが、例えば平たくした粘土にヘラで渦模様を描き、丸い型の上にひっくり返して生地を乗せます。すると、コロンとしたユニークな形状の器ができます。また、陶画に描かれた宇宙の星屑模様の正体はなんとタバコの灰を紙に落として焼いた跡。下絵などは起こさず、型紙を自在に組み合わせていくと一枚の幻想的な宇宙が生まれます。
「つい、売れない物を作ってしまうんですよ(笑)。最近の一般家庭では、スペースの問題もあって食器棚に重ねて収納しやすい器が人気ですよね。でも、世間の傾向ばかり考えていると表現が限られてしまうし、それを得意とする人たちがたくさんいますから(笑)。使いやすさばかりを杓子定規に考えず、作りながら僕自分も楽しくなる作品を作っていくつもりです」