阿蘇の玄関口となる西原村。神水（しんずい）が有名な揺ヶ池（ゆるぎがいけ）神社のある山道を進んで行くと、板に並んだ湯飲みを天日干しする一軒の建物が見えてきます。ここが��遊（たかゆう）窯を一人で切り盛りする宇��（うだか）弘子さんの工房です。まわりには木々が立ち並び、窓からは紫や白色の小さな花たちが色濃く茂った草木のすき間から顔を出します。
「手仕事が好きで、小代焼を1年学んだ後に2年間、ろくろの勉強をしました。当時は“◯◯焼き”というブランドがつかないと売れない時代でしたが、私は自分なりの作品を作りたいと思って。伝統があり、絵付けなどの多彩な技術を持つ唐津焼を学びたくて、日展作家の大橋裕（ひろし）さんに師事しました。」
もともとは唐津焼のように鉄絵を用いた渋い色合いが好みでしたが、買い手の嗜好にあわせてかわいらしい色あいにアレンジしていったそうです。
「プロとして生活していくには、お客様の要望に応えていくことも大切。私は高級食器よりも、一般の方が毎日の食卓で日常的に使って楽しんでもらえる“用の美”を提供したくて。価格も手頃にしているんです。」
宇��さんが使う土は唐津のものが主流で、粘り気が少ないビスケットのような手触りで扱いにくいですが味わい深い表情になります。最初にろくろで土を成形した後、脚となる高台を仕上げて白い泥で白化粧を施します。乾燥させて素焼きし顔料で絵付けを行い、釉薬をかけて再度ガス窯で焼いていきます。
「絵付けに一番手間がかかります。長年買い求めて下さる方もいらっしゃいますから、窯開きごとに違うカタチやモチーフを描くよう心がけています。」
「土選びや釉薬など最上級のものを吟味して、自分の楽しみとして取り組んでみたいですね。」