main_3065.JPG【刀剣】
松永日本刀剣鍛錬所
松永 源六郎 -荒尾市-
1948年福岡県大牟田市生まれ。1971年刀匠・川村清氏に師事。1978年に文化庁から刀匠の認証を受け独立。日本刀保存協会現代名刀展入選17回。伝佐々木小次郎所用太刀や江田船山古墳出土の国宝・銀象嵌銘大刀復元、たたら製鉄体験授業など日本刀の認知向上に尽力。第18回「くまもと県民文化賞」受賞。個展5回。


 ゴウゴウと燃え盛る炎を前に、黒い鉄の塊と向かい合う刀匠松永源六郎さん。
日本刀は武士道精神の拠りどころとして、また近年は美術品として尊ばれてきた。松永さんによると日本刀の良し悪しを見分けるポイントは3つ。

「地金の良さ、姿の良さ、刃文(はもん)の妙味。刃文とは刃物に浮き上がる波模様で、焼き刃土(やきばつち)を塗って焼き入れをする際、刀匠の技量が発揮されます。」

 松永さんが幼い頃は地金を集めて換金し、お小遣いにしていた時代。

「父が刀剣を収集しており、鉄が美しい日本刀になることに惹かれました。」

刀匠のもとへ弟子入りして30歳で独立。日本刀を作るには、認可を受けた刀匠の下で5年以上修行したあと文化庁の研修や実技試験を受け、晴れて独立できる。さらに、製造できるのは月に2本までという制限もある。

「機械がない時代、刀鍛冶は3人がかり大槌を振り下ろして地鉄を鍛錬していました。“トン・テン・カン”という音が鍛冶屋から聞こえていたものです。」

一人で日本刀作りに励む松永さん。“たたら製鉄”という古代製鉄法で、砂鉄から炭素を含んだ玉鋼(たまはがね)を作っている。これをゆっくり沸かして再び溶かしてブロック状にし、大鎚で叩き延ばしては折り重ねる“折り返し鍛錬”を行う。一振りの刀(69~75㎝)を作るのに必要な玉鋼は約9kgだが、最終的には800g程度までになる。鉄の種類ごとに下鍛えした後、さらに10数回叩き延ばした鋼を折り返して鍛える作業を繰り返すと、刀の中に何万という層が重なり日本刀の強靭さを生み出す。これが諸外国の刀にはない、大きな特徴だ。鍛錬の終わった地鉄は水を付けた鎚で叩き締め、刀の長さに打ち延ばす(素延べ)。これを火床で赤く加熱し、小槌を使って姿を整えていく(火づくり)。

 「刀の理想の線を思い描いたら、小槌一つで叩き出す。鎬(しのぎ)、棟(むね)、刃の線で刀姿が決まりますから全神経を集中させます」。仕上げ、焼き入れ、合い取り(刃こぼれを防ぐため、火に刀をかざして加熱する作業)、鍛冶(かじ)研ぎ、試し切りなどを行い、タガネで作り手の証しである銘切(めいき)りを行えば完成だ。

 松永さんは日本刀に親しんでもらおうと、試し切りを行う武道小岱流斬試道(ざんしどう)“源青会(げんせいかい)”宗家として国内外に50人ほどの門下生をもつ。また一方では懐剣(かいけん)や短刀の作刀体験を国内外から受け入れている。1000本以上の日本刀を作ってきた松永さんだが、決して安価とはいえないものだけに、どれだけ丹誠込めて作っても現実は厳しい。

「日本刀に限らず、伝統工芸品には手作りでこその味があります。多くの皆さんに関心をもってもらい手に入れていただくことで励みにもなりますし、需要が増えれば価格も下げられ後継者も育ちます。そうした現状を知っていただき、伝統工芸を育てていただければと願います。」


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分子のそろった玉鋼にワラ灰であくを付け、ゆっくり沸かして塊に。これが刀のもととなる

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3センチ角に切りそろえた松炭で火床を作り、3日がかりで地鉄を鍛えていく

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最初に地鉄を荒打ちする大槌、仕上げの素延べに用いる小槌。火床の炭を動かす炭かき

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松永源六郎さん作の太刀。“折れず、曲がらず、良く切れる”ことが日本刀の3要素といわれている【※作家さん所有の作品です】