main_5101.JPG【肥後象がん】
雅号:光秋
河口知明-熊本市-

1946年生まれ。
1961年に人間国宝の肥後象がん師・故米光太平(よねみつたへい)氏に師事。
1969年独立と同時に田辺恒雄氏の門下に。
熊本県美術展、西部工芸展(2010年まで4年連続入選)、くらしの工芸展、アジア工芸展など入賞・入選歴多数。現在は象がん制作と併行して、熊本県伝統工芸館主催の伝統工芸養成講座の講師を務める

 1965年に肥後象がん師・米光太平氏が人間国宝に指定されて以来、第二の興隆期を迎えた肥後象がんの歴史。ちょうどその頃、米光氏から手ほどきを受けた技を今に伝えているのが、河口知明さんだ。幼い頃から手先が器用だったこともあり、親の勧めで米光氏へ弟子入り。「10代でこの道に入りましたが、当時、同世代の間で肥後象がんの知名度は低く、自分の仕事を説明するのに一苦労しました(笑)」。

 ネクタイピンから肥後六花を表現した女子プロゴルフの優勝記念の額まで、さまざまな作品を手がける。たとえば注文の場合、依頼主の要望を元に筆で図案を起こし、鉄生地の上に紙を置いて肥後象がんの布目切り(素地にタガネで布目状の切り込みを入れる。)を行い、方で抜いた金銀の板や金線、銀線を打ち込んでいく。型は葉や花、家紋など一つひとつ手作りで、1回限りしか使われない型も少なくない。鉛の上に金や銀の板を当て、上から型を叩いて絵柄を抜き出していくが、力加減が難しいため準備だけでも一苦労だ。

 象がん技法としては現在布目象がんが一般的だが、河口さんが得意とするのは、鉄生地の表面を掘り下げ、高肉(たかにく)に彫刻した別の金属をはめ込む高度な据紋(すえもん)技法。嵌め込まれた花鳥風月の絵柄は本物のように立体感があり、異なる金属が合わさったとは思えないほど一体感がある。「古い鐔(つば)の修理も手がけていますが、そこには据紋や平象がんといったさまざまな技法が使われていますから、これらを習得していないと修理もできません。まともな道具がなかった時代にこれだけの高い技術を発揮した先人たちの技を、守り続けたいですね」。

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作品写真

(左奥から時計回りで)高度な技術を要する青海波(せいかいば)模様の香合、桜をあしらったタイピンとペンダント、帯留めにもなるウサギのブローチ。梅を立体的に表現したブックマーカーは、据紋技法でチタンに銀を嵌込んだもの。裏側には桜の象がんが施されている【※作家さん所有の作品です】


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▼道具

手入れされた道具は、ほとんどが手作り。金づち、毛彫り用タガネ、ピンセット、磨き棒など

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金銀の模様を打ち抜く型も一つひとつ手作り。家紋や花、文字などがあり、中には拡大鏡で見るほど細かいものも

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▼スケッチ

幾何学模様からキャラクターやアルファベットまで、依頼主の希望に応じてデザインを起こしていく

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▼手元/布目切り

縦、横、斜めと4回タガネで布目を切り銀を打ち込む。角度や布目の切り方が未熟だと、金銀が剥がれてしまう

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▼手元/毛彫り

毛彫りで模様に輪郭を刻むと、より立体的な表情が生まれる