sagyou2.JPG【肥後象がん】
白木 良明-熊本市-
1968年生まれ。父・光虎氏に入門後、修行を始める。日本伝統工芸展など受賞歴多数。肥後象がん振興会会員をはじめ、伝統工芸後継者グループ「青匠会」の一員として伝統工芸品の魅力を発信している。日本工芸会準会員。伝統工芸士。


 トントントントン。カナヅチを叩く音にあわせて、鉄生地の表面に1㎜あたり4本という極細な線が刻まれていく。これは肥後象がんの工程の一つで、鉄生地の表面に金銀を固定するために必要な“布目(ぬのめ)切り”の作業。タガネという溝を彫るための道具で“米”の字状に4方向から切り目を入れていくのが、肥後象がんの特徴だ。光りに当てるとなんともいえない鈍い輝きを放つ。

 「手元を見なくても、手の感覚だけで刻めますよ」

と笑うのは、肥後象がん師の家系・白木家の4代目を継ぐ白木良明さん。シャープで男性的といわれる父・光虎さんの作品に対し、良明さんの作品は女性的で繊細。この世界に入り20年を超えるが、最初から家業を継ぐ気持ちがあったわけではなかった。

「幼い頃から周りに跡継ぎと言われてプレッシャーを感じていました。学校を卒業後は横浜で建設業に就きましたが、外の世界を知ったことでかえって家業を継ぎたいという気持ちに。家を出るときも帰って来るときも、父は黙って受け入れてくれました。」

 父に入門後、最初に練習したのが、さきほど紹介した布目切りの作業。鉄材に刻み方の練習をしてはヤスリでキレイに削り、また刻むという繰り返し。根気のいる地味な作業で「1日にして飽きました」と苦笑する良明さん。しかし朝から晩まで毎日続けるうちに、半年ほどで作品らしいものが作れるように。このときの基礎が、今に繋がっているという。
 現在はブローチやペンダントなどの装身具を手がけるほか、工芸展に向けた蓋物などの大作にも挑戦。図柄は職人ごとに異なるが、良明さんの場合は古典模様をアレンジしたものに加え、ハート形やクロス形などの現代的なデザインも積極的に取り入れている。

「知人やお客様との会話から作品のヒントをもらうことも多く、その一つが首にかける“喧嘩札”。熊本で行われる藤崎宮秋季例大祭に参加する人のために作りましたが、木札よりも品があって美しい。自分の名前や家紋を入れたり、これを小さくした携帯ストラップも好評で」

「伝統工芸品は実際に触れたり使ってみることで、味わいが増すと思います。もったいないからと仕舞い込まず、普段使いとして使ってもらえると嬉しいですね。




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タガネで鉄生地に刻みを入れたあと(布目切り)、布目の隙間に金糸を叩き込んでいく“打ち込み”の様子。硬さと粘りを併せ持つ鹿の角を用いる

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小さなカナヅチや用途ごとに何通りもあるタガネなど、仕える既製品ではほとんどなく、大半は象がん師の手作りで揃える。

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「布目象眼天道虫文鉄文鎮」西部工芸展受賞作【※作家さん所有の作品です】