main_4787.JPG天草陶磁器
蔵々窯(ぞうぞうがま)
許斐 良助(このみ りょうすけ)-上天草市-
1958年天草郡大矢野町(現・上天草市大矢野町)生まれ。1980年九州産業大学芸術学部美術科卒業。1988年から丸尾焼で修行後、山幸窯に学ぶ。1992年開窯。1997年日本陶芸展入選、2000年西日本陶芸美術展熊本県知事賞、朝日陶芸展入選、出石磁器トリエンナーレ展入選。21世紀アート大賞2000でグランプリなど受賞多数。

  「ウォン ウォ ウォー ウォウ。こんな月の夜は、こうやって ときどき 吠えるのもいいもんだ。」

 心のメッセージを記した皿や、本物そっくりな蓮根に豆のオブジェ、牛柄のマグカップ…。蔵々窯(ぞうぞうがま)に飾られた作品のどれもが、強烈な個性で手に取る私たちに何かを訴えてくる。これらの生みの親、許斐(このみ)良助さんは、手つかずの自然が残る上天草市の離島、維和島で生まれ育った。現在、工房を構えるのは山林に覆われた維和桜公園の中。人里離れた場所にありながら、ここの作品は観ているだけで心が弾む。 

 大学を卒業後約6年間、小中学校で美術を教えていた。
「学校で工芸クラブを作っていて、空き時間に静かな空間の中でロクロを回していると、何とも言えず心地よくて。当時、粘土を買い求めていた丸尾焼で働く人たちの仕事ぶりが楽しそうで、弟子入りを志願したんです。」

 1992年の独立以来、その作風は年々変化を遂げる。最近取り組んでいるのが動物シリーズでキリン、ヤギ、ブタなどの蚊遣りや香立てだ。2頭身でユーモラスな姿が愛らしく、大人が飾っても違和感のないアート性を兼ね備えている。

「蚊遣りといえばブタが定番ですが、昔ながらのものはブタに見えなくて(笑)。これに負けないモノを作ってみようと思ったんです。」

磁器とは思えないマットな質感は、天草陶石から脱鉄した際に不要となった鉄分の塊を砕き、粘土に塗って焼締めたのが始まり。その後、地元で採れる天草陶石を用いて、象牙を模したオブジェなどの大作にも挑戦してきた。

 数ある動物の作品の中でも、犬をモチーフにした作品には特別な思いが込められている。

「数年前、熊本県では犬の殺処分件数が全国の上位を占めていたことを聞いて、アートの力で何か出来ないかと思って。」

共感を得たアーティストたちが集まり、啓蒙を目的とするグループ展を開催。鎮魂の想いを込めたブルーの犬のオブジェなど、作品を通じて失われた生命の声を代弁している。焼物以外にも、ギターを片手にハスキーな声で聞く人を魅了するミュージシャンとしての顔をもつ許斐さん。決まった枠に収まりきれないオリジナリティの進化に、今後も目が離せない。

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生地を延ばすめん棒、動物の蚊遣りや蓋物、蓮根やカタツムリの置物の原型を作る石膏型

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焼くと白くなる粘土は天草陶石がベース

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石膏型に粘土を押し当て、均一の厚みで粘土を成型。シワが寄らないよう、最初は上に向かって叩きながら下げていくのがコツだ

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パグ犬をモチーフにした蚊遣り。どこかユーモラスで、見れば見るほど愛嬌のある表情の虜になりそうだ【※作家さん所有の作品です】