main_4831.JPG【陶磁器】
息峠窯(いこいとうげがま)
岡田 圭史-天草市-

1948年熊本県天草市生まれ。旧本渡市内で焼物の手ほどきを受けた後、美濃焼の産地で知られる岐阜県多治見市で3年間修行。1972年に独立。1977年県美展文化協会賞、天草大陶磁器展出品ほか。東京や熊本で個展を開催

 薪の登り窯を収めた小屋の前には、釉薬の入ったバケツが無数に点在していた。息峠窯の主、岡田圭史さんは、鎌倉や室町時代の古陶をヒントに自然釉の焼物を研究してきた。「昔の焼物は薪窯を使って灰が器に降り掛かることで、自然にガラス質の膜となる自然釉となっていたんです。そうした昔ながらの焼物に魅力を感じて、自然界のものを使って釉薬を試してきましたが、見たことのない色の器が生まれたときは感動しましたね」。薪の灰に含まれるアルカリ成分と土の中のケイ酸分が化学反応を起こすと、ガラス状になる。釉薬の成分も、この化学反応を応用したものだという。

 岡田さんが釉薬の原料に使っているのは、木灰と石。天草陶石と同種の流紋岩などを用い、木灰は庭に植えたレモングラスやこの地方名産であるミカンの木など、その数なんと80種類にも及ぶという。「剪定や伐採された枝葉をたくさん分けてもらいますが、灰になってみると、ほんのわずか。ビワの木を軽トラック5台分もらった際も、出来上がった灰は17kg程度でした。」集まった木々を野外で2、3日焼き続けた後、残った炭火の燠(おき)を取り除くのに、また2日。こうして完成した灰が、優しい自然の風合いを創り出している。最近は、海沿いに生育する車輪梅(しゃりんばい)を使った釉薬を研究しているそうだ。「梅のような花を咲かせますが、釉薬に使うと仕上がりが乳白がかっていて美しいんです。」自然の植物は大抵、釉薬の原料として使えるという。「ただし、その成分をどう分類して配合していくかという見極めには、訓練が必要かもしれませんね。」

 茶陶が好きで茶碗、茶入れ、花入れ、懐石の食器に至るまで、すべてのバランスが整った作品に挑むことで、自分の技術を確認してみたいと語る岡田さん。すでに長い作陶歴があるが、今の仕事を大変だと感じたことはないという。「“山芋を掘っていたら良い粘土が出たから作ってみよう”とか、常に自然体。こうした自分らしい暮らしの中で、意外性のある作品が生まれたりするんですよ。夏は近くの海で潜ったりもして、ストレスが貯まることはないですね(笑)」。 


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道具はすべて手作り。竹の繊維で作ったハケ、成型に用いる木べラや削りガンナ、柄ゴテ、弓など。わらしべを撚(よ)ったしっぴきは切れやすいため、昔は腕試しの道具でもあったとか

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釉薬の原料となる石と木灰。苓北や深海など近隣で採石されたものからイス、ビワ、カエデ、みかんなどの枝木を燃やして作ったものまで、キレイに分別

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昔の焼物をイメージした焼締の一輪挿しと、白化粧の上から色の異なる釉薬で変化をもたせたマグカップ。釉薬が素朴な風合いを生み出す器
【※作家さん所有の作品です】