高田焼(こうだやき)
上野窯(あがのがま)
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上野 浩之(あがの ひろゆき)-八代市-
1956年熊本県八代市生まれ。佐賀県立有田工業高等学校窯業科および九州造形短期大学デザイン科卒業後、熊日総合美術展、西部工芸展、県美展など受賞歴多数。2005年八代市市民栄誉賞陶額制作。

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上野 浩平(あがの こうへい)-八代市-
1978年熊本県八代市生まれ。東京藝術大学彫金専攻卒業後、京都伝統産業技術者研修陶磁器コースで陶磁器製造の基礎を学び、12代浩之に師事。くらしの工芸展、西部伝統工芸展など入選・入賞歴多数。2009年にはハローキティ生誕35周年記念企画として「青磁象嵌ハローキティ茶碗」を制作。


高田焼の歴史は、豊臣秀吉の朝鮮出兵の折、加藤清正に従い渡来した陶工・尊楷(そんかい)の存在を抜きにしては語れない。細川忠興公が小倉入城の際に招かれ、開窯したのが始まりとされる。その後、分家した3家が細川家御用窯を続けてきたが、そのうちの一家で、400年余にわたる伝統を守り継ぐ12代目こそ、上野窯の上野浩之さんだ。

 「高田焼の特徴である象嵌青磁の技法は、半乾きの素地に竹べらまたは押印によって文様を彫り込み、長石を埋め込みます。細川家御用窯だった江戸中期、藩の御用絵師による指図書をもとに作品を作り納めていましたが、その名残として象嵌技法が残ったようです」。代表的な文様には雲鶴手、三島手、暦手、菊、桜、牡丹、唐草などさまざまあり、今も作品の半分近くにこれらの柄が用いられている。
 繊細華麗な描線で花鳥風月を表現する高田焼は、土作りの難しさと象嵌という特殊な技法により大変な手間を要するため、少量しか生産出来ない。だからこそ希少性があり、この伝統技法の継承に誇りをもつ陶工たちの手で大切に守られてきたのだ。「高田焼には象嵌青磁以外にもさまざまな技法がありますから、江戸時代の名品にも迫るような作品を再現してみたいですね」と浩之さん。

 数ある工程の中でも、とくに重要なのが土作りといわれる。高田焼でいう青磁は、釉薬自体で発色させる一般的な青磁とは異なり、鉄分の高い素地をガス窯による還元法で焼いて土そのものの色を生かす。土作りで色が決まるため、その調合や窯の温度管理が重要なのだ。「最近は既製品の土を手に入れることも出来ますが、高田焼に適したきめ細かさと象嵌青磁の発色に適した陶土は、自分の手で精製しないと作れません」。上野窯では、幕末から150年にわたり地元・日奈久の土を自分たちで掘り続けている。

 現在、浩之さんのもとでは息子・浩平さんが修行をしている。東京藝術大学で彫金を学び、焼物作りの道へ。「焼物以外の技術を吸収することで作品に広がりが生まれると思って」。その経験は、現在の活動に十分生かされているようだ。「伝統文様以外にも幾何学文様といった抽象的な文様を取り入れ、同年代にも共感してもらえるオリジナルデザインにも取り組んでいます。高田焼は敷居が高いイメージがありますが、クオリティを保ちつつ気楽に扱える器づくりを試行錯誤しています」。それぞれの視点から高田焼の可能性を探る親子の活躍が楽しみだ。


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ベースとなる白土と鉄分が多い赤土を7:3の割合で調合。水で濾して質のよい土だけを選び分けるため、半分ほどの量になってしまう。土作りだけでも1カ月以上

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(左から)竹べら、用途によって形状の異なるカンナ、象嵌文様に用いる型押し、手彫り象嵌用の竹べら

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土が乾き始める前に精密な象嵌を施していく必要があるため、1点ごとが勝負。高い集中力が必要となる

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文様を緻密に彫り込んだ青磁象嵌暦手茶碗は父・浩之さんの作。高貴な品格が漂う【※作家さん所有の作品です】

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オブジェとしても楽しめる浩平さん作の玉花入。土そのものの調合で白、黒、グレーの規則的なコントラストを生み出している【※作家さん所有の作品です】