高田焼(こうだやき)
竜元窯
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江上 元-八代郡-
1947年熊本県八代郡鏡町生まれ。八代郡氷川町の伝七窯で修行後、1987年に八代郡氷川町に竜元窯を開く。古来の伝統技法を受け継ぎならも広い視点から型にとらわれない高田焼を目指す。陶芸教室も開催

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江上 晋-八代郡-
1982年熊本県八代郡鏡町生まれ。佐賀県立窯業大学校卒業後、父のもとで作陶開始。2007年熊本県美術協会展伝統工芸館賞、2008年同展で協会賞を受賞。2009年西部伝統工芸展入選、熊本県美術協会展奨励賞二席受賞。会友推挙。2010年西部工芸展入選


 池のほとりに高田焼の工房を構える竜元窯。絵描きを目指していた江上元さんだが、結婚を機に作陶の道へと転向。伝七窯で7年修行ののち、2年間の資金集めを経て手に入れた場所だ。 

 八代を代表する高田焼の特長といえば、高麗青磁に白や黒の象嵌を施したものが知られているが、土が生乾きのうちに文様を刻んで別の土を塗り込み、余分な部分を削り取るという一連の作業は一朝一夕で出来るものではない。

しかし「丁寧さを心がけてはいますが、象嵌自体は慣れれば出来ますよ。あとは個性や窯の性質次第」と笑う。

印鑑を使った古典的な柄から手彫りまでオールマイティにこなす父に対し、息子の晋さんは配合の異なる土を巧みに使い分け、現代建築にもマッチする幾何学模様などの近代的な青磁象嵌に取り組んでいる。

「建築雑誌からヒントを得ることが多いですね」と語る晋さんは、大学では文系を専攻。卒業後、佐賀県有田町の佐賀県立窯業大学校で焼物の基礎を身につけた。日常使いの器づくりと並行して、公募展にも積極的に挑み続けている。


 使う土は、地元・日奈久にある竹之内峠から採掘してきて粘土を作る。「高田焼を作る窯元は3軒しかないため、土が尽きることはないでしょう」と元さん。焼き上がりにムラが出にくいガス釜を使って月1回ほどのペースで焼成。素焼きに約10時間、本焼き15時間を窯の前で過ごす。

今後取り組んでみたいことを元さんに尋ねたところ、「作りたい作品は、ふとアイデアが出るときまで自分でも分からない。だけど、ヒントはどこにでもあって、何を見ても気づかない人もいれば、ちゃんと感じ取る人もいる。どんな“視点”を持つかが、大切です」。

一方、高田焼の新たな可能性を探る息子・晋さんは「高田焼は長い歴史を刻む伝統的な焼物ですが、昔と同じ物をそのまま作っても模倣の繰り返しに過ぎません。先人が受け継いできた技や作り方を守りつつ、自分たちの手で組み立て直して高田焼の“今”を感じさせるものを作りたいですね」と、若手陶芸家らしい想いを熱く語ってくれた。

時代が移り変わる中で、伝統工芸もより身近な存在となってきた。その流れでどこを目指し、どう舵を切るか。そこに、伝統工芸を未来へとつなぐヒントが隠されている。


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地元の竹之内峠から採掘してきた土から粘土を作る。象嵌部分に使う長石。

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削りカンナで胎土の表面を滑らかにする。象嵌を施す高田焼には欠かせない工程だ

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押印や竹べらで文様を丹念に刻み、鉄分や長石などを混ぜた白黒の土を塗り込み、余分な部分を削り出す

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釉薬をかけない焼締(やきしめ)で可憐な花の象嵌を引き立てた、崑崙花(こんろんか)象嵌花入(元さん作)【※作家さん所有の作品です】

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線象嵌の奥に扇が隠れているように色の境目で模様を出した秀作、青磁象嵌花入(晋さん作)【※作家さん所有の作品です】