熊本の工芸家紹介

main_3036.JPG小代焼(しょうだいやき)
ちひろ窯(ちひろがま)
前野 智博(まえのともひろ)-荒尾市-
1960年生まれ
小代焼瑞穂窯、沖縄県の読谷村で修行の後、1998年に小代本谷 ちひろ窯を開窯
2003年小代焼窯元の会会員、2006年経済産業大臣指定伝統工芸士(小代焼)認定
公募展の入選・入賞をはじめ展示会などで活躍

 1998年にちひろ窯を開窯、2003年から荒尾市川登に移転し、作陶を続けて来た前野智博さん。会社勤めを辞めて28歳からこの道に。

「モノ作りをしたいと考えていたとき、焼物を修行している方と縁があって。」

小代焼を学んだ後、さらなる技術を習得すべく沖縄県へと飛んだ。

「沖縄は中国、韓国、ベトナムなどの文化が入り混じって独特の文化を育んできたところ。焼物の技法が豊富なんです。」

焼物で有名な“やちむんの里”で修行したとき身につけた独特の絵柄や風合いは、現在も一部の作品で反映されている。
 作っているものは小代焼だが、従来イメージする深い渋みのもの以外にも色やカタチのバリエーションが多い。

「小代焼は地味な色合いの印象があるので、釉薬を白っぽくしたり原土に白土を混ぜたりと明るくして、若い方にも興味を持ってもらえるよう心がけています。」

 土は窯のすぐ近くを掘れば出て来るという恵まれた環境。

「掘る場所は段々限られてきていますね。釉薬は近所の農家から分けてもらったワラを焼いた灰を使っていて、なんとか自給自足に近い昔ながらの手法が出来ています。」


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右から切り糸、コテ、なめし革、竹べら。焼物づくりの基本となる道具は、自分の手になじむものを手作り。

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器の種類ごとに作られたトンボで直径や深さをそろえる

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青小代のマグカップ、花瓶、平鉢。窯の種類や置き場所、焚く時期、火力、釉薬の調合によって色も風合いもこんなに異なる【※作家さん所有の作品です】

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 小代焼の代表的な技法といえば、自由奔放な流し掛けの模様で、下地の生地に釉薬(ゆうやく)をかけ、さらに上から釉薬(ゆうやく)を厚く掛けると、計算では出せない複雑な色や自然な流れが描き出される。

「釉薬(ゆうやく)を多めに流したいときは火の近くに置くなど窯詰めも工夫していますが、焼きすぎて釉薬(ゆうやく)が底まで流れ落ちてしまうと使い物にならない。その加減が難しいですね。」

 使いやすい物を心がけて工夫を重ねているので、何年か前に買ってくれた人が同じ物を…となると、すでに無かったり。

 「定番が多いと仕事はラクですが、個人のお客様が相手なので変化があるほうが見る方も楽しいだろうし、気が多いんですよね(笑)。」

 腐敗しない、生臭さが映らない、湿気を呼ばない、毒を消す、延命長寿が得られるとして別名“五徳焼”とも称される小代焼は、まさに暮らしの中で生きる器。

「焼物は不思議なもので、長く売れなくて棚の隅にあると光を失ってしまう。使ってもらってこそ生きるものだと、しみじみ感じます。でも、ふと目と目が合うようにお客様と焼物のご縁があるんですよね。」

そんな取材中、10年間店先に置いてあった大壺が県外から訪れたご夫婦との出会いを果たし、新しい住処に旅立っていった。