main_4611.JPG小代焼
松橋窯
長木 實(みのる)-宇城市-
1941年長崎県佐世保市生まれ。1956年熊本県工業試験場窯業部へ入所、1958年小代焼健軍窯に勤務。1998年宇城市松橋町に小代焼松橋窯を始める。21世紀アート大賞4回入選、県美展協会賞、くらしの工芸展入賞3回。2008年島田美術館、熊本県伝統工芸館で個展など

 住宅地の庭の一角に、こじんまりとした庭の一隅の木造の工房で小代焼を焼いているのが、長木實さんだ。学生時代、先生の勧めで熊本県工業試験場窯業部へと進学。熊本県と愛知県で修行を重ね、1998年に現在の宇城市松橋町で松橋窯を開いた。「窯を開いた当時、まわりは畑ばかりだったんですよ。この庭は妻の趣味でね(笑)」。そう語る長木さんの隣りで微笑む奥様は、“使う側”の代表として率直に意見してくれる、良きアドバイザーだ。


小代焼は、ワラ灰を主原料に木灰や長石を調合した釉薬をかけて、そのかかり具合や色の変化を楽しむ焼物。大別すると黄小代、青小代、白小代が基本だが、窯元によって粘土や窯の種類、焼成温度が異なるため、その印象はずいぶん異なる。「経験を積んでも、どんな色調に仕上がっているかは窯を開けてみないと分かりません。窯での器の積み方や、煙突に吹く風の具合も影響します。」

 長木さんの場合、地元で採れる土をベースに、色の種類はもちろん、艶消しなどの特徴的な釉薬を使い分けて、変化を出すよう工夫している。焼成は、灯油の単窯を使って年5回ほど。「修業時代は、決められた数や形をこなす毎日でしたが、今は自分のペースで作りたいものを作ることが出来る。同じ作品をまとめて作る場合でも、注文品でない限り、せいぜい20個まで。そのぶん、手をかけた作品を残していきたいと思っています。」

 時折、“趣味”として天草陶石を使った焼物にも挑戦している。表面がツルツルとした白磁とは違い、粒状の粘土が混ざった釉薬の質感やアイボリーのやわらかな色調がなんともいえない。「小代焼と磁器は対照的な器ですから、土が混ざらないよう作業場や道具を徹底的に掃除してから作り始めます。」

 工房には抹茶碗や水指、茶入といったお茶道具から日常食器に至るまで所狭しと並ぶ。自らを料理や生け花の引き立て役とわきまえ、毎日の生活にそっと寄り添う器たち。長木さんの優しさがしみじみと伝わってくるようだ。



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ワラ灰をベースにした釉薬は7種類。左をかけると白小代、右は青小代となる

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袋物(花瓶など)で手の届かない場所を成型するための柄ゴテ、カットや仕上げ用カンナ、小鉢と大鉢用のヘラなど、すべて長木さんの手作り

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水で濡らしながら器の口をなめらかに

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粗土を使った高台付きの白小代は、小鉢にフリーカップにと活躍
【※作家さん所有の作品です】