main_6506.JPG【陶磁器】
一先窯(いっさきがま)
山口耕三-玉名郡-

1949年生まれ。宮城県奥州の村上世一氏、備前焼で人間国宝の藤原啓氏と雄氏、宮島焼の川原利通氏、小代焼井上泰秋氏らのもとで計18年間修行。1885年一先窯開窯、1988年熊本県伝統的工芸品指定。2003年小代焼が国指定の伝統的工芸品となり、2004年には伝統工芸士に認定。妻の美子さん、息子・智一さんとともに作陶に励む

 熊本を代表する焼物として国指定の伝統的工芸品とされる小代焼。野武士の風格にも例えられるように、野趣溢れる風合いは華美を削いだ茶等の世界でも愛されてきた。18年という長い修業期間を経て、1985年に玉名郡長洲町で「一先窯」を開いた山口耕三さん。展示室には、うっすらと黄色がかったワラ灰釉の焼物たちが、行儀よく並んでいる。

 焼物を始めたのは、志野焼(しのやき)を描いた随筆を読んで、作者の生き方に魅せられたから。「モノ作りはいいなと純粋に感動しました」。宮城県の生まれだが、全国の窯元を転々としながら修行を重ねた。姉夫婦が熊本へ移り住んだこともあり、親も安心するだろうと山口さんも熊本へと移住した。

 「熊本にも焼物は色々ありますが、小代焼は素朴で力強い。稲ワラ、山の土、木の灰と、使う材料は身近なものばかりで、幼い頃から田んぼに囲まれて育った私としては、安らぎを感じたんですね。」

 山へ出かけて土を掘り、粉砕や濾過、土練りなどを経て、粘土を作る。小代焼の特徴でもあるワラ灰の釉薬は年に1回、田んぼ1反分を燃やして用意している。「景気の良かったころだと3反分は燃やしていましたよ。」と、山口さんは誇らしげに当時を語ってくれた。

 窯の内部を酸素不足にする還元焼成によって、ワラ灰釉が焼き色に変化をもたらすが、同じ作り方をしていても粘土の質や釉薬を作る年で出来映えは違ってくるという。「陶器は磁器と違い、厚みがあって割れやすい。ですが、土に空いた小さな空気穴で呼吸をしていますから、花瓶に生けた花は腐りにくく、温かい飲み物には保温性を発揮する。そこが魅力でしょうね」。独立以来、作陶を手伝ってくれた妻・美子さんに加えて、2007年からは息子・智一さんという次の担い手も決まった。2010年の「くらしの工芸展」では、初出品にして入選という好スタートをきったばかりだ。親子そろって口を揃えること、それは「基本に忠実に」。奇をてらわず、使えばホッとする器。それこそ、「一先窯」の個性だろう。

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ヘラやとんぼ、しっぴき、透かし彫りに用いる剣先(けんさき)など。親子といえど、自分の手にあわせ道具はアレンジする。

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稲ワラの灰釉がかかった黄小代の器や花瓶。ろくろは耕三さん、たたら作りの紅葉形小皿は妻・美子さんの作
【※作家さん所有の作品です】

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原材料