main_3905.JPG【陶磁器】
泗水窯
福吉 浩一-菊池市-
鹿児島県出身。九州産業大学芸術学部卒業後、日展作家の大畠久氏に師事。1981年に菊池郡泗水町で開窯。くらしの工芸展グランプリ、21世紀アート大賞次席、西部伝統工芸展など受賞歴多数、日本伝統工芸展では連続入選。2001年に秋篠宮家に炭化象嵌線条文花器を献上。日本工芸会西部支部幹事、熊本大学講師


 緻密に計算された段取りと、それを根気強く続ける努力。高いプロ意識で焼物に取り組む福吉浩一さんの作品は凛として何事にも物怖じしないかのような風格と緊張感を放つ。

 大学を卒業後、鹿児島県在住の日展作家・大畠久さんのもとで修行した。

「師匠は造形を追究される方でしたから、私もその影響を受けました。」

出身は鹿児島だが、父の定年を機に熊本へ。母の実家がある菊池市泗水町で窯を開いた。福吉さんの焼物は、一般的には馴染みの薄い炭化焼き締め(たんかやきしめ)という焼き方。釉薬をかけず、高温度による強い還元炎状態で燻(いぶ)し焼く特殊なものだ。窯に薪を入れて密閉し、不完全燃焼のままスモークのように燻すことで素地が炭素を吸着し灰黒色になり、硬く焼き締まる。焼き上がりが安定しないため、何度も失敗を重ねたという。

「窯の中で煙をコントロールするのは、難しくて。最初は作品の半分が白く、残り半分が真っ黒に焼けたりしたものです。」

数えきれないほどの器を焼いてはデータを取り、調整を重ねてきた。
 近年は、炭化焼き締めにさらに象嵌(ぞうがん)を施すというステージへと進んでいる。象嵌は生地に溝を彫り、異なる素材を埋め込むことだが、福吉さんの作品はここでも緻密さが際立っている。まるでコンピュータグラフィックで描いたように等間隔でのびる細い線。1本の線の中に10色ほどの粘土を埋め込み、色の配置を一線ごとにずらしながら、見事なまでのグラデーションを織りなしている。しかも、よく見ると器の曲線に従いながら線が中心に集まっているのが分かる。定規状の型紙を線ごとに作り、少しずつ太さや角度を調整しているのだ。

「粘土の配合で伸縮率が変わるため、これを統一しないと隙間やヒビ割れを起こしてしまいます。細か過ぎて途中でやめたくなることなんて、しょっちゅうですよ(笑)。」

福吉さんにとって、1にも2にも段取りが命。

「焼物の都合に、自分があわせているという感覚ですよ。」

 象嵌以外にも力を入れているのが練り上げで、異なる色の粘土を貼り合わせ、ねじりを入れながら模様を作る。中国の唐の時代に行われていた古陶磁であり、人間国宝の松井康成(こうせい)さんが練り上げの追求者として知られ、新しい手法を次々と発表しました。技を伝承する10人の1人として福吉さんが選ばれ、2年間茨城まで、定期的に通いながら技を受け継いだ。

「緻密に計算して段取りを組まないと出来ない作品ばかりですから、数が作れないぶん、1点ごとに妥協はしたくない。焼物は、割れなければ何百年でも残るものですから、そのときの自分が出来るベストなものを作っていきたいですね。」


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スライスして重ね合わせた磁器の粘土に“うずら手”の模様を施し、片栗粉をまぶしながら型にはめて成型する

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象嵌をするため、粘土は収縮の少ない土を全国から取り寄せてブレンド

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線象嵌に用いる定規状の型紙。1作品のために何十本も作るが、どこにどう使うかは福吉さんにしか分からない

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線象嵌による炭化焼成の大皿。グラデーションに見える線は、色の違う粘土を一つひとつ埋め込んだもの
【※作家さん所有の作品です】