【陶磁器】
工房菊池窯 陶房まつたけ
松竹 洸哉-菊池市-
1946年福岡県生まれ。小石原焼、上野窯の各窯元で技術を学び、1976年に「菊池窯 陶房まつたけ」を開く。熊本県伝統工芸館での「開窯30年展」をはじめ、ギャラリーなどで個展やグループ展を開催。西日本陶芸美術展、九州山口陶芸展ほかで入選入賞を果たす

 山の中に佇む、どこか懐かしい建物。庭に敷き詰められた耐熱煉瓦の小径が、住まいと工房を結んでいる。小石原・上野(あがの)で焼物を学び、菊池市藤田で窯を開いた松竹洸哉さんは、鳥や虫たちの語らいに耳をすませ、自然と響き合う作品を作り続けてきた。さまざまな技法や釉薬を用いるが、中心となるのが乳青色を帯びた青磁だ。

 東京でサラリーマンをしていた頃、たまたま立ち寄った九州の民芸陶器の展示会で、いろんな焼物に衝撃を受けた。

「今まで目にしたことのない焼物ばかりで。1年後には九州へ戻り、福岡から鹿児島までいろんな窯元を見て歩きながら弟子入りを志願。そしてたどり着いたのが、福岡と大分の県境にある小石原焼でした。」

日用雑器をベースとする“民芸の焼物”小石原焼に対し、気高さを纏う青磁はまったく対照的にも思える。

「青磁といえばハイグレードで高額な印象ですが、これを“安くて良い物”を目指す民芸の理論に照らして、青磁で日用雑器を作ろうと決めたんです。」

やるなら、より難易度の高いモノを。静かな口調の中に、理想とする焼物への思いが垣間見える。

 青磁は、釉薬の扱いや焼成条件がほかの焼物とは違うため、失敗する確率が高いという。

「青磁では鉄が発色剤となりますが、酸素の供給を少なくして酸素不足の状態にすると、青く発色します。酸素の少ない状態で窯の中の空気調整をするのは難しいため、失敗も多いんです。」

呉須釉や白釉など、10種類ほどの釉薬を使い分ける。

「自分の思った色が出来るまで、調合した釉薬をかけた器を焼いて、結果を見てはまた調合を変えてテスト。ひたすら、この繰り返しです。」

今使っている釉薬にたどり着くまで、10年もの歳月を費やしたという。古い学校の教室を移築して建てたという工房の隅には、釉薬の調合割合を記したテスト用の器が積み上がり、その苦労を物語る。

 「今は自己表現として造形的なものを作るのが流行していますが、たとえばロクロのようなものは毎日鍛錬して、熟練しないと身に付かないもの。一生修行だと考えています」


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釉薬の骨格となる長石は、火打石などに使われていた石英が風化したもの。粘土は鉄分を多く含んだ天草陶石を基本に、さらに鉄分などを加えて調整

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テストしてきた釉薬の配合を書いたノートは、大きな財産

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種類の異なるヘラやコテ、トンボ、糸切り、弓、カンナ、エゴテ、鹿皮など

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高台を削り出す。

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(奥から)艶消しの白釉コーヒーカップ、貫入(ヒビ)が見どころの青磁片口、コバルト釉の小鉢。うろこ状の珍しい急須は、半乾きの段階でカンナを使って削り込んだもの【※作家さん所有の作品です】