main_3474.JPG【陶磁器】
桃崎陶房
桃崎 孝美-阿蘇郡西原村-
1981年佐賀県有田町で陶芸修行、福田英明氏に師事。1986年西部工芸展、九州山口陶磁器展、西日本陶芸美術展にいずれも初入選。1989年阿蘇郡西原村に築窯、1991年西部工芸展で熊本県知事賞、九州山口陶磁展毎日新聞賞ほか受賞歴多数、個展なども精力的に行う。日本工芸会準会員

 中国で生まれた“青瓷”に取り組んで約30年が経つ、陶芸家の桃崎孝美さん。焼物の一大産地である佐賀県有田町で修行中、青瓷の美しさに惹かれた。 中国の古典に学びながら試行錯誤を繰り返してきたというが、青瓷は表面の微小なピンホールさえも傷とみなされる繊細な焼物。焼き方は大きく2つに大別されるが、“還元焼成”の場合、窯を酸素不足にして不完全燃焼の状態に。すると発色剤に用いた酸化鉄の作用で青瓷特有の碧や空色を生み出す。逆に空気を窯に十分供給して完全燃焼させる“酸化焼成”の場合、鉄錆色に発色する。窯の煙突にある煙道を遮断するダンパーで、酸素の量を調整する仕組みだ。  

 青瓷の場合、釉薬を何度も塗り重ねて生まれる絹のような質感と深みを帯びた水色が特徴だが、桃崎陶房で使う青瓷用の釉薬は10種類。長石や木灰など原料によって完成した色合いが違ってくるため、過去の文献をもとに配合を1%単位で変えながら納得するものを作ってきたという。

 「テストだけだと5000近く試してきましたよ」。  青瓷は釉薬の掛け方も独特で、最初に釉薬の中に素焼きした作品を浸した後、4~5㎜程度の厚みになるまでスプレーガンで釉薬を塗り重ねていく。釉薬が厚いぶん、キズも出やすい。青瓷の釉薬は粘り気があるため、焼成の際に発生するガスがうまく外に逃げられず、クレーター状の穴が生じてしまうことがある。

 「失敗すれば、一窯全滅。それも何度となく経験しました。そのときは、さすがにやる気を失うことがありますが」と苦笑いするが、それでも止められない魅力が青瓷に潜んでいるのだろう。  

 桃崎さんが現在、研究を続けているのが氷裂貫入(ひょうれつかんにゅう)という技法だが、還元焼成で納得する青色を生み出すのが非常に難しいという。貫入とは土と釉薬の収縮率の差によって器の表面に入るヒビの事。氷裂貫入はその名の通り、配合や焼き方の加減によってヒビが折り重なり、鱗状を呈して幻想的な美しさを生み出す。これを完成させて、大きな壺や皿に反映させるのが夢だと語ってくれた。 澄み切った空のような“天青の色”を目指し、窯の火を燃やし続けている。


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釉薬の原料となる長石、カオリン、木灰、鉄分。木灰は長石を溶けやすくし、発色を良くする

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釉薬の原料と水を小石の入ったポットミルに入れて回転させると、細かい粒状になる

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(奥から時計回りで)器の高さを測るトースカン、成形に用いるヘラ、器の径と深さを決めるトンボ、胎土を削るためのカンナ

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釉薬の原料となる長石、カオリン、木灰、鉄分。木灰は長石を溶けやすくし、発色を良くする
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