main_5803.JPG【陶芸家】
美歩志窯(みほしがま)
田原 弓-熊本市-

1949年福岡県大牟田市生まれ。20歳で二川焼の復興を目指すメンバーの一員となり角吾市氏、小山富士男氏に師事。8年間修行の後、熊本県荒尾市で独立。南関町に移転して現在に至る。くまもと阪神での個展をはじめ、熊本県伝統工芸館では陶芸家4人で結成する「蕊(しべ)の会」によるグループ展を開催

 焼物技法の一つである焼き締めは、何日もかけて火を絶やさずくべ続ける上、仕上がりの見当がつけにくい。根気と体力を必要とするやっかいな焼物ともいえるが、この焼締に魅せられて追究してきたのが「美歩志窯」の田原弓さんだ。



 もともと絵を描くのが好きだったという田原さん。刷毛目に絵付を施した二川焼の復興を目指すメンバーの一員として声をかけられ、陶芸の道へ。その後、師匠・小山富士男さんの影響を受け、焼締を作陶の中心としてきた。独立後荒尾市に窯を開いたものの、約1週間かけて窯を燃やし続けることもあり、人里離れた現在の山中へと窯を移築した。
 焼き締めの場合、釉薬や絵付などを施さないぶん、焼成がすべてを決めると言っていいだろう。土は1,300℃まで上昇する熱に長時間耐えられるものを三重県の伊賀から調達。使う窯は、焼締に向いた半地下式穴窯。通常の登り窯と比べて熱効率は良くないが、下の土全体を温めてくれる。長くじっくり焼成した後、大地の湿気とともにゆっくりと冷めていく。地上式の窯よりも時間がかかるぶん、ほかの窯では出せない微妙な風合いが生まれるという。そして焼成には、赤松の薪が欠かせない。火をくべて1分ともたない杉と比べて、赤松だと約3倍の時間をかけて火力を保ってくれる。「薪のくべ方や窯詰めが“景色”を作ります。火の回り具合を計算しながら器の置き方を決めますが、ある程度の色合いは出せてもなかなか思うようには出来ません」。長い年数をかけ、数えきれないほどの焼締と向き合ってきた田原さんの言葉だけに、焼締の奥深さを思い知らされる。



 焼締のほかにも、倒炎式の単窯による炭化焼成の作品も手がけている。地元の土や鉄分を調合して生まれたチョコレート色に白く対比する象嵌のコントラストが、焼締とは違った魅力を醸し出す。香炉や一輪挿しなど、一つ飾るだけで華やいだ気分になれそうだ。

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野趣溢れる土味に、流星群を思わせる景色が浮び上がる焼締の徳利とおちょこ。炭化焼成による香炉は、桜文様のかわいらしいさと色調をおさえた土色のバランスが絶妙
【※作家さん所有の作品です】

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手元

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焼締に不可欠な半地下式穴窯。両側の壁いっぱいに薪が山積みされていたが、1週間分の焼成には足りないという

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手作りのヘラや柄ゴテ、丸い文様を打つための竹製ポンス、粘土を締める叩き道具など