main_2152.JPG【陶磁器】
蜩(ひぐらし)窯
渡辺ヒデカズ-上益城郡-

1953年熊本県生まれ。大学卒業後、備前焼作家・伊勢崎満さんに師事。その後、沖縄へ移り島武巳さんのもとで南蛮焼を学ぶ。1984年に北海道で開窯。1986年からは熊本県上益城郡御船町吉無田に拠点を移し、全国で個展などを展開する

 車1台がようやく通る幅の砂利道をひたすら進むと、陶芸家・渡辺ヒデカズさんの「蜩窯(ひぐらしがま)」が見えてくる。通りがかりに立ち寄れる場所ではないにも関わらず、併設されたカフェは平日でも賑わっていた。

 窯開きや個展に向け、毎年テーマを決めて作品づくりを行う。「備前焼などの焼締という手法を使った土色の作品が中心ですが、最近は釉薬を使った白い器も作ってみたいと思ってトライしています」。

 北海道の大学生時代、アルバイトで土器の発掘作業を手伝った。「縄文土器の素朴さにおもしろ味を感じて」。

 卒業後、岡山で備前焼、沖縄では南蛮焼を学んだ後に北海道で念願の窯を開いたが、故郷の熊本に窯を移した。窯の外で蜩が鳴いていたことから“蜩窯”と命名したという。

 最近は、焼物で絵を描くという新しい技法に取り組んでいる。陶芸用の粘土を乾燥させて粉状にしたあと、色を調合した粉を型紙の上からカンバスとなる板の上に振りかける。粉を叩き付けて密着させて焼くと、砂絵のように立体感のある質感が生まれる。“陶画(とうが)”と名付け、宇宙やアフリカの原野など今までに影響を受けた光景が描かれている。展示販売されているアクセサリーや器と同様、アフリカンアートを思わせる大地の力強さと生命力を感じた。

 渡辺さんの場合、作品制作に使う道具も作り方もユニークだ。ロクロも使うが、たとえば平たくした粘土にヘラで渦模様を描き、丸い型の上にひっくり返して生地を乗せる。すると、コロンとユニークな形状の器ができる。陶画に描かれた宇宙の星屑模様の正体は、なんとタバコの灰を紙に落として焼いた跡。下絵などは起こさず、型紙を自在に組み合わせていくと一枚の幻想的な宇宙が生まれるのだ。

 「つい、売れない物を作ってしまうんですよ(笑)。最近の一般家庭では、スペースの問題もあって食器棚に重ねて収納しやすい器が人気ですよね。でも、世間的な傾向ばかり考えていると表現が限られてしまうし、それを得意とする人たちがたくさんいますから(笑)。使いやすさばかりを杓子定規に考えず、作りながら僕自分も楽しくなる作品を作っていくつもりです」。


dogu_2164.JPG

▼道具

引っ掻きキズをつけて粘土同士を接着させる道具、粘土の表面を整える杓文字、粘土を伸ばす棒。キッチン道具を転用している

kona_2160.JPG

▼粘土の粉

陶芸用の粘土を乾燥させて叩き、粉状に。色分けされた粉は素人目には同じに見えるが、ピンクやブルーなど一つの色でも濃淡によって袋分けされていた

temoto_2162.JPG

▼手元

急須の茶こしを使って、型紙の上から粉を振りかけていく。象眼の器や絵などに用いる

katagami_2157.JPG

▼型紙

厚紙や新聞紙など、渡辺さんの手にかかると何でも型紙の材料になってしまう。宇宙に広がる星屑の模様は、なんとタバコの灰で焼いたもの




sakuhin_2139.JPG

▼作品

星や月を透かし紋で施した焼締のルームランプ【※作家さん所有の作品です】

sakuhin3_2142.JPG

粘土の粉を使ったオリジナル作の陶画、象眼手法を用いた皿、空想の動物をイメージしたオブジェ【※作家さん所有の作品です】