main_6365.JPG【漆工】
あそ工房
橋口 さつき-阿蘇市-
1955年長崎県生まれ。1994年に福岡から家族で移住し、「あそ工房」を開く。色漆を使った生活の器を中心に、木工家具を手がける夫・橋口靖氏とともに、熊本県伝統工芸館でのグループ展や個展などに出品している

  丸太を積み重ねた三角屋根のログハウスの住まいのそばに展示室兼工房を構えるあそ工房。福岡でサラリーマンをしていた鹿児島出身のご主人・橋口靖さんと奥様・橋口さつきさんが自分たちの手で完成させた。

「年を取ったらログハウスを作って住もうと、大好きな阿蘇で土地だけは手に入れていたのですが、ログハウスづくりの研修を終えて帰って来た主人の目の色が変わっていて(笑)。休日ごとに福岡から通い、土地の整備から始めて完成したころには3歳の子供が小学4年生に。途中で転勤もあったりしたので、長い年月がかかってしまいました。」
と、さつきさん。


 熊本で2年間修行したのち、椅子やテーブルを手がける木工家として新たな活動を始めたご主人。家具の端材で何かできないかと夫婦で思案した結果、もともと陶芸教室に通って器作りが好きだったさつきさんは、粘土を木に変えて飯碗や箸といった色漆の食器を作り始めた。

「漆器はハレの日に使うイメージがあるかと思いますが、私の漆器はざっくばらんに使っていただける身近なものを目指しています。」

最近は、オーダーメイドによる手鏡やバレッタなどの依頼もある。

 色漆で難しいのは、湿度の管理。漆の場合、乾燥させるためには一定の湿度が必要となるが、湿気が多すぎると黒ずんでしまい、逆に少ないと乾かない。漆を塗ったあとは室(むろ)の中に収納し、漆の配合ごとに適した湿度や時間をテストしながら、ベストな発色を見極めていく。

 漆の塗り方には色々あるが、木目がうっすらと浮び上がる拭き漆の場合、漆を均一に拭き上げる作業を何度も行い艶を出す。作品によってはフチに布を補強したり、錆付けといって下地の漆を2〜3回塗っては平滑に研ぐ作業を繰り返す。さらに塗っては研ぐという作業を数回行い、上塗用の漆を塗り重ねる。最後に鹿の角の粉と油で呂色磨きを数回繰り返せば、独特の美しい艶(つや)をまとった器の完成だ。1つが完成するまでに3ヶ月はかかるため、種類の違う作品を同時進行している。

「失敗すると作業をやめて、慌てずに一定時間を置くと気分も変わって解決策が見つかる。その繰り返しですね」といいつつ、終始笑顔を絶やさない、さつきさん。「これから作ってみたいのは、お盆と重箱。鎌倉彫りを学んでいるので、これを組み合わせたものに挑戦してみたいですね。」

urushi_6360.JPG

(漆はオリジナルの色を調合して冷蔵庫で保管。使う分だけ室温で戻して使う

dogu_6355.JPG

漆には、人毛で作った刷毛がベスト。漆が付いたままだと固まってしまうので、作業が終わった後はしっかりと漆を落とし、油を塗って保管。次に使うときは、その油を落とす作業を欠かさない

situdokei_6363.JPG

室(むろ)で一定の湿度を保ちながら、ゆっくりと漆を乾燥

sakuhin_6352.JPG

下に塗ったの漆を表に出して使い込んだ風合いをもたせたカップや碗、飲み口を銀で覆った小粋な升、黒漆に朱漆を塗り重ねた丸皿は、菓子器やサラダボウルなど幅広い使い道が広がる
【※作家さん所有の作品です】