main_2452.JPG【玩具】
彦一こま
井芹 眞彦-人吉市-
1943年熊本県生まれ。昭和初期から余技としてコマ作りをしていた父が1947年から本業とし、1977年に2代目を継ぐ。九州の民話「彦一とんち話」に登場するタヌキをモチーフにした彦一こまは、野趣豊かな民芸品として評判に。1952年の熊本県主催郷土玩具展で県知事賞を獲得

 熊本を代表する民話「彦一とんち話」に登場してくるタヌキをモチーフにした彦一こま。その作り手が井芹眞彦さんだ。「ほとんどの作業を一人で行うため、注文の半分も追いつかない状態で」というが、それでも年間2,000個を作り上げている。

 34歳まで横浜で自動車メーカーの営業マンをしていたというが、高齢になった父を思って帰郷することに。「一人っ子でしたし、80歳の父を一人にしておくのは心配で」。 熊本に戻ってからは、ほぼ独学。「幼い頃から父の仕事を見たことはあったのですが、教えてもらえることはなくて」。仕事を通じて知り合った韓国のロクロ師の技術を見て覚えていったという。


彦一こまは、笠、頭、胴体、土台を分解すると、それぞれがコマとして遊べる。「見た目の楽しさはもちろんコマのもつ意外性が魅力なんです」。一つひとつがコマとしての役割も果たすだけに、余計に手間もかかる。

 人吉からサクラの木を取り寄せ、変形や割れるのを防ぐために半年かけて自然乾燥。ロクロを挽いていくが、同じ大きさやカタチを作るのに10年はかかるという。使う道具はいずれも自作で、ロクロのほかに色付けの回転台として使われていたのはレコードプレイヤーを改良したもの。

 今後の後継者が気になるところだが「儲かる仕事ではないので息子には勧められませんが(笑)、自らやりたいという言葉が出たら、任せたいとは思っています」。伝統的工芸品として、一貫して作り方やデザインを守り続けてきた井芹さん。コマの胴体には“肥後彦一”という墨文字が印字されているが、これは印刷機のプレートに遺されている亡き父の文字だという。「この文字を見ると、仕事を継いだ責任感を感じるんですよ。どんなに貧乏しても続けていかなければと。好きな仕事で食べていけるだけでも幸せです」


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▼道具

手作りの木工ロクロ機。回転部分のベルトの軸となるプーリーを使い分けて大小のパーツを彫っていく

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▼手元

筆を使い、水性絵の具で集中しながら模様を描く

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▼作品/分解

「彦一とんち話」のタヌキと、熊本の「おてもやん」をモチーフにした彦一コマ。胴体や頭を分解すると4つのコマになる
【※作家さん所有の作品です】