岩崎五郎2.jpg【ガラス】

岩﨑 五郎-人吉市-

1932年人吉市生まれ、1954年東京文化学院美術科卒業。1984年保谷硝子(現・HOYA)を経て、人吉へ帰省。1989年人吉球磨総合美術展熊日賞をはじめ、日本伝統工芸展入選、西部工芸展入賞など入選・入賞多数。2009年九州国立博物館「工芸のいま伝統と創造」に出展。日本工芸会正会員、熊本県美術協会会員

1932年 人吉市にて出生
1954年 文化学院美術科卒業
1984年 保谷硝子KK(HOYA)を退社、人吉市に工房創設
1989年 人吉球磨総合美展 熊日賞
1990年 第60回熊日総合美展 奨励賞一席
    第1回九州ガラスアート展 奨励賞
    第25回西部工芸展 初入選
1991年 第38回日本伝統工芸展 初入選
1993年 第28回西部工芸展 岩田屋賞
1995年 第30回西部工芸展 大分市長賞
1996年 第31回西部工芸展 日本工芸会西部支部長賞
1996年 日本工芸会正会員認定
1999年 第35回日本伝統工芸富山展賛助出品(連続)
2000年 第55回熊本県美術協会展 協会賞
2002年 2006年に亘り日本工芸会西部幹事就任
    熊本県美術協会 会員認定
2004年 日本橋三越百貨店にて個展
2006年 熊本鶴屋百貨店にて個展
2009年 「工芸のいま伝統と創造」九州国立博物館出展
2010年 県美術協会工芸部「くまもと美術工芸の今未来」出展

 52歳、夢への再スタート。無数の泡を封じ込めた半透明ガラスに桜や椿、小鳥といった日本の美を焼き付けた “パート・ド・ヴェール”。フランス語の“ガラスの練り粉”が語源で紀元前14世紀、メソポタミア地方から出土された記録もあるほど長い歴史をもつ製法。昔はゆりの根の絞り汁でガラス粉を練り、型に貼り込んで焼成されていた。

 このガラス工芸を本格的に始めるため、岩﨑さんは長年務めた大手ガラスメーカーを退職。もともと画家を目指して上京したが、生活のために就いた仕事がガラスと出会うきっかけに。「アメリカ向けの金属工芸をデザインする仕事を経て、声をかけられた保谷硝子(現・HOYA)ではクリスタルガラスの企画デザインを任されました」。

 デザインの参考にと銀座のデパートで開催されていたパート・ド・ヴェール作家の展示会を目にした瞬間、「衝撃が走った」という岩﨑さん。「透明ガラスばかりデザインしてきましたから、欧米にはこんなガラスの表現法があったのかと驚きました」。なかでも、優しく幼子を抱える母子像が彫刻されたメダイヨンは、今も作品作りの指標として、色あせた写真を大切に飾っている。

 この手法を取り入れられないものかと会社に提案するが、大量生産を主とする大手メーカーでは困難と分かり、52歳のときに退職。能登半島で1週間開催された講習会へと足を運び、その後は作品を紹介した解説書の写真などをヒントに試行錯誤を重ねてきた。

 粘土を彫塑(ちょうそ)して、耐火性のある石膏で型取りし、花びらや葉っぱになる部分に色ガラス粉を敷く。上から無色透明のスキガラスをのせて加熱していくと表面のガラスが溶けて蓋となり、ガラスに含まれていた空気が逃げ場を失い、泡となって封じ込められる。このとき一気に熱を加えると型がヒビ割れをおこすため、温度管理には細心の注意を払う。

 「新しい作品に取り組むたびに、新たな難関が待っていて(笑)。2008年に地元の青井阿蘇神社が国宝となって、地域や人との繋がりを強く意識するようになりました。悠久の歴史が生み出した荘厳(そうごん)の美を、作品で表現してみたいですね」。最近は自身の制作についてブログで綴るなど、もうじき80歳を迎えるとは思えないほどのバイタリティに頭が下がる。何かを始めるのに年齢制限はないことを、身を以て教えてもらった。

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▼製法
石膏胎型(A図)に粘土でレリーフ(浮彫り)を彫塑(陽刻)し(A図)
次に型枠で囲い耐火石膏を流す(A図)良く硬化した後に
石膏胎型(最初の粘土を貼付けた原型)のみを崩して取除く、
残った耐火石膏型を逆にして(B図)下型として設置する。
開口部が上を向きA図で彫塑を施した部分が陰刻(凹)となる。
その凹部に施色をする(B図)色も同じく色ガラス粉を使用、
CMCという化学のりを混ぜたガラス粉で陰刻凹部に色をさす。
別途にあらかじめ作っておいた上型(B図)を素地部(板厚)に必要量のガラス粉の上に水平に乗せ、その上から重しを乗せて重圧をかける。耐火石膏(上、下)を除湿するため炉の扉を開き乍ら昇温し、500℃では扉を閉め徐々に昇温させること。
800℃~850℃(ソーダ系ガラス)を上限とし、電源OFF後は徐冷に十分時間をかける事。

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▼手元

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▼ 材料

彫塑した型の底に色ガラスを敷いて絵付け。素地の硝子は急激な温度差を加えて塊を粒状に割り、乳鉢で粉状になるまですりつぶす

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▼道具

石膏型、彫塑ヘラ、つげべラ、掻き棒など。毛先の短くなった仕上げ筆は35年間使い続けたもの

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▼作品

ヤマザクラを彫刻した文鎮(ぶんちん)と、椿3種(藪椿、肥後椿、侘助)の菓子皿
【※作家さん所有の作品です】