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人吉伝統家具やまがみ
山上 貢司-阿蘇-

1958年熊本県人吉市生まれ。1982年から父のもとで木工を学び、3代目として「山上家具店」の後を継ぐ。1995年熊本県伝統的工芸品に指定。西部工芸展や熊日総合美術展に連続入選、熊本県美術展入賞および連続入選、国展や日本伝統工芸展入選など入選・入賞歴多数

 お盆が収納できたり本棚として使えるよう奥行きを深くしたり。掃除がしやすいよう移動キャスターを取り付けた食器棚など、山上貢司さんが手がける木工家具は使い手の身になった“かゆいところに手が届く家具”だ。数々の賞歴を重ね、その高い技術がいかんなく発揮された食器棚は昔懐かしい引き手様式。格子の入った扉の美しさはもちろん、地震の際にも食器が飛び出してこなかったという喜びの声が届くなど、実用性も申し分ない。
 現存する人吉家具において、もっとも長い創業年数を数える「人吉伝統家具やまがみ」。かつて、鹿児島県の指物(さしもの)職人だった初代・清蔵さんが桜島の大噴火を逃れて人吉に移り住み、1914年に「山上家具店」として創業。2代目で父・清明さんの後を継ぎ、現在3代目となるのが貢司さんだ。

 使う木材は、もちろん無垢。かつては木材資源に恵まれた場所として栄えてきた人吉・球磨地方だが、1990年以降はその供給量も減少の一途をたどっている。仕入れた木材は十分に乾燥させるため20年ほど寝かせるが、なかには初代から受け継いだ100年前のものも。「乾燥が十分でないと、後から隙間の原因になります。売った後も責任がありますから」と山上さん。樹皮付きの状態で仕入れても指物として使えるのは半分程度で、残りは焚き物に。貴重な部材のみが使われている。

 伐採した後も生き続ける木は、気候によって膨張や伸縮を絶えず繰り返す。そのため、山上さんが家具づくりで重視しているのが“逃げ”だ。パーツの一部にわざと凹みを入れて空気の逃げ道を付けることで、家具の狂いを抑えることができる。「それには乾燥や組み方の技術が必要になります。家具職人同士で決して手の内は見せないですし、家具が使われて数年後に狂いが出るかどうかが技術の見せどころといえますね」。材質、技術ともに最高を目指してきた山上さんだが、大量生産が主流となっている今の世の中で良い家具を作り続けるのは難しいと嘆く。「良い木材は仕入れる金額も大きいですし、使えるまでに長い年月を要します。そのぶん安価とはいえませんが、100年はもつ家具を目指して作っていますから理解していただけると嬉しいですね」。惚れぼれするほどしなやかなデザインと、絹のように滑らかな質感がすばらしい。

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阿蘇神社の楼門にも使われている地元のケヤキ。1枚あたり100万円もするもので、100年以上、普通の材で20年以上寝かせた状態

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人吉家具の技術・技法を集めて作られた山栗の小ダンス。木の膨張や歪みを考慮した“逃げ”の細工が見えない部分に施されている【※作家さん所有の作品です】