熊本の工芸家紹介

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【木工】
木工房 兼丸
兼丸 民夫(かねまる たみお)-阿蘇郡-
1948年熊本県生まれ。
職業訓練校・木工科を修了後、独立。
八代、大分、小国と活動の場を移し、現在の南阿蘇に「木工房 兼丸」を設立。
使いやすさと佇まいの美しさを兼ね備えた自然素材の家具を作り続けている

  南阿蘇村の国道325号線からペンション村方面へ曲がって山道を登ると、ドラマ「北の国から」を彷彿とさせるプレハブの作業場が見えてくる。中から現れた兼丸民夫さんもまた、素朴な感じの笑顔が似合う人だ。

 前職を辞め、職業安定所で、たまたま目に留まったのが職業訓練校の募集だった。
「軽い気持ちで木工科へ進んだのですが、これがおもしろくて。そのまま家具作りにハマっちまったんですよ(笑)。」

修了後、すぐに独立して作業場を構えたのは35歳だった。
「家具業界は斜陽産業でしたが、せっかく好きな仕事を見つけたのだからダメもとでやってみようと思って。」

 数々の家具を手がけるなかでも、とくにこだわって続けているのがロッキングチェアだ。背もたれから座にかけて木が美しいカーブを描き、座ると体のラインになじんでゆっくりと揺れ始める。

 「木の薄板を大きなセイロで蒸して曲げ、身体の動きになじむよう調整しています。節(ふし)一つあっても曲がらないので、適した材料選びが大切です」。

兼丸さんが家具を作るとき、特に意識しているのが“佇(たたず)まい”だという。

「実用品でありながら、彫刻のように佇まいが美しい “用と美”を意識しながら作っています。」

我が子同然に手塩をかけて育てた家具たちが手元を離れ、新しい主の部屋に置かれたとき、そのイスがどう活きるかを想像しながら作っている。

「“こんな物を作りたいんだけど、どうかな?”なんて、木と相談しながらやっています。何せ相手は自然のものですから。」

掃除のとき動かしやすいようにとテーブルの中央に鉄の取っ手を付けたり、アームチェアにちょっとした飲み物や本を置けるスペースを作ってみたりと、使い手の“あったらいいな”をデザインとして組み入れているのも、木と一心に向き合ってきた兼丸さんでこその発想だ。作業途中のイスに何度も座っては、高さやアームのカーブ具合を確かめながらカンナで微調整していく。

「面倒だと分かっていても、手をかけてやるのが好きなんです。」

家具への深い愛情が、ひしひしと伝わって来た。



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さまざまなサイズがあるミニかんなは、最少のもので親指サイズ。“け引き”(定規の一種)は、鉛筆や刃が付いたタイプを使い分ける

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木の棒を打ち込み、木でできた矢状のくさびを挿入させて板同士を固定する“割りくさび”という工法。鉄釘を使わないのが信条だ

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新作のアームチェア。サイドテーブルがわりのスペースには本や飲み物を置ける(第28回くらしの工芸展熊本県伝統工芸館賞受賞)【※作家さん所有の作品です】