main_3853.JPG【木工】
木彫家
上妻 利弘-玉名郡-

1961年熊本県玉名郡和水町(旧三加和町)生まれ。
1985年の熊本県伝統工芸展入選。1988年アトリエ「森の家」設立。第8回熊日21世紀アート大賞グランプリ受賞、現代日本彫刻展入選(山口県宇部市)など入選入賞歴多数。第10回フランスの芸術祭「Le Vent Des Forets」に選ばれ渡仏。2007年フランス・パリで「CERCLES」展開催、2008年「MUSEUM KOZUMA」オープン。2009年韓国で個展を開催


 その発想は、どこから湧いてくるのだろう。木彫家・上妻利弘さんが生み出す「SEIMEI」シリーズの彫刻は、植物の芽吹き、人間の臓器、細胞や微生物など、見る側によって受け取り方が変わる。しかし、その作品たちからは息遣いが聞こえてくるような生命力を感じる。約10年前にアートコンペでグランプリを受賞、これを機に取り組んできたのが、「SEIMEI」シリーズだ。

 「もともと自然が好きで、生き物が生まれてくる最初のカタチに興味があって。木を毎日削っていくうちにアイデアが浮かんでくるんです。」

 刃物を使って木を彫刻するカービングで、さまざまな造形の可能性を追求してきた上妻さん。あるアメリカ雑誌に載っている古いデコイに魅せられたのが、この世界に入るきっかけに。24歳からナイフで木を削り始めるとのめり込み、今の仕事になっていたというが、その活動は今や国内にとどまらない。フランスの芸術祭「Le Vent Des Forets」に選ばれ、渡仏。約15日間かけて森の中で彫刻に取り組んだ。これを機に知り合ったアーティストと共にフランスで作品展を、韓国のカフェでは個展も成功させている。そんな上妻さんだが、本人は親しみやすい熊本弁でユーモアを交えながら会話してくれるような、良い意味で“アーティストらしくない”人だ。玉名郡和水町の山中にアトリエを構え、より自然を感じながら制作活動を続けてきた。「慌てずに、時間をかけて。楽しみながら出来れば、いいですね」。2008年には「MUSEUM KOZUMA」(予約制)をオープン。高い天井をもつ真っ白な空間には、大小さまざまな作品が並んでいる。


 上妻さんが使う道具は、おもにノミとナイフ。「最初にデザインを起こし、どこを残して、どこを削るかをイメージします」。材料には、国産の木を選ぶ。「基本は地産地消。いつでも手に入る木を使いたいと思って」。丸太の状態で手に入れて、みずからの手で加工する。なるべく自然のカタチを残したいとの思いからだ。テーブルなどの家具はやわらかな曲線を描き、サイドに彫ったノミあとが味を出す。


 「安価な家具が出回り、使い捨てが当たり前で、昔のように“次の世代まで使う”という感覚がなくなってた気がします。しかし、一方では小家族化でプライベート空間にこだわる人も。そんな方々に、作品を手にしてもらいたいですね。」

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手のひらに収まるほどの小さなナイフを手に、一定の間隔でテンポよく木を削る

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ホームセンターで手に入れた安価なものだが、切れ味は遜色ないという

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 木は丸太ごと手に入れ、5年以上かけて乾燥。ヒノキ、クスノキ、イチョウなど地元または国産が基本

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動く彫刻。木のパーツを上から落とすと、カタカタと落ちていく姿がユーモラス【※作家さん所有の作品です】