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人吉挽物 古川工房
林田 正晴-人吉市-
1961年人吉市生まれ。挽物師で義父の古川昭二氏に師事。人吉球磨総合美術展、熊本県美展、西部工芸展など受賞歴多数。2005年熊本県伝統的工芸品に認定。現在、人吉クラフトパーク石野公園内で実演製作などを行う

 サラリーマン時代から挽物師(ひきものし)として活躍する義父・古川昭二さんの仕事を手伝い、34歳で本格的に挽物師の道を歩み始めた林田正晴さん。現在は人吉クラフトパーク石野公園内の木工館に工房を構え、製作の傍ら(かたわら)実演や子供向けの箸作り教室なども行っている。人吉・球磨地方は木材資源に恵まれ、県内外の銘木が集まる集積地だったが、林業の衰退とともにその規模も縮小傾向に。林田さんも少なからず影響を受けているというが、注文が入れば盆や夫婦碗などを依頼に応じて作っている。

 使う材料はケヤキが中心。最初の木材選びが挽く技術以上に難しいようで、良い木だと思い手に入れてみても、挽いてみると思ったように木目が出ない…ということも。

 ちなみに、お盆のように丸いものだと木を輪切りにして使うものかと思いがちだが、実は縦切りにして使うのだという。なぜなら、輪切りだと年輪に沿って割れてしまうからだ。切り出した皮付きの木材は反れやヒビ割れを防ぐため、数年寝かせた後に荒削りして、さらに数年乾燥。

「最低でも木材を5年以上乾燥させてから使うため、在庫の管理はもちろん、どの程度寝かせるかのタイミングを見極めるのも重要です。いざ木を挽いてみると乾燥が足りなかった…なんてことになれば、目も当てられませんから。」

 ようやく使える状態になった木は、ろくろに取り付けて仕上げ。馬と呼ばれる木の台で削り道具と腕を固定させ、ガラガラと大きな音を立てながら回転する木に丸ガンナやキサゲといった手製の削り道具をあてて挽いていくと、木片が滑らかな曲線へと変化していく。一見、簡単そうにも見えるが、材料が材料だけに削り損ないは許されない。林田さんも、この仕事を始めた頃は何度も失敗を重ねながら、体で手の感覚を覚えていったという。

 成型後は、拭き漆(ふきうるし)で仕上げて光沢を出す。漆を塗ってはすぐに拭き上げ、乾燥させた次の日にまた漆を塗る。この作業を5回以上繰り返すと、素朴な木質の表面がしっとりと艶を帯び、気品を増して見える。

 「作った品物を手に取って喜んで下さるお客様に巡り会えたときは、本当に嬉しいですね」と語る林田さん。手仕事だからこそ出せる、持ちやすさや使いやすさを、ぜひ手に取って感じてもらいたい。

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しっかりと乾燥させた木材のみを使う。こちらのケヤキは数年寝かせたのち、荒削りしてさらに5年以上寝かせたもの

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拭き漆に用いる漆や人毛の刷毛、初回の漆に用いる薄め液

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(手前から時計回りに)道具と腕を固定する木製の馬、仕上げ削り用のキサゲ、器の深さを測ったり毛がきの線入れに用いる道具、コンパス、荒削り用の丸ガンナなど

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(左から)黒柿の棗(なつめ)と、口当たりの滑らかなケヤキのぐい飲み、朱肉付き印鑑立てスタンド、黒檀に銀の象嵌を施した朱肉ケース【※作家さん所有の作品です】