main_6696.JPG【木工】
古川工房
古川 昭二-人吉市-
1927年広島県生まれ。1940年から叔父で人吉市在住の挽物師、酒井寅三氏に師事。全国伝統的工芸品展中小企業庁長官賞、西部工芸展本県知事賞、同熊本市長賞、日本伝統工芸展入選など入選・入賞多数。日本工芸会正会員、熊本県美術協会会員

  1940年、第二次世界大戦前。13歳の頃に故郷・広島を離れて人吉市に住む叔父のもとへ。挽物師をしていた叔父から手ほどきを受け、1960年に独立。「古川工房」を開いた。現在おもに手がけているのは、菓子器や棗(なつめ)などの茶道具中心。玄関口に飾られた盆は子供の両手を広げたほどもある大きさで、野生の桑の木で作られた貴重なもの。

「丸い形なら大抵のものは挽物になるよ」と、古川さんは笑う。

 年輪の中心となる芯は割れやすいため、挽物として使えるのは限られた部分だけ。

「蓋物(ふたもの)の場合、たとえ同じ木でも、材料を取る場所が変われば蓋を重ねたときに木目が合わず、見栄えが良くない。本当はそこまで考えなくてもいいのでしょうけど。」
そこで妥協しないところが、古川さんの挽物が高く評価されている理由の一つだろう。

 木材は、九州産のものが中心だが、最近は手に入りにくくなったという。
 丸太の状態で最低5年、それから荒ぐり(荒めの成型)をして、さらに2ぁら3年寝かせる。しっかり乾燥させる。

 古川さんが選ぶのは、同じ挽物師が見てもため息が出るほどの銘木ばかり。最高級とされる黒柿は、野生で小さな実を付ける柿の木の中でも老木で、独特の模様が入っているのは7割ほど。材料費だけでも高額で、現在ではほとんど入手が困難という。拭き漆によって光沢を帯びた器全体に入った茶褐色の模様は、見る人の想像力をかき立てる。

 そしてもう一つ、特筆すべき肥松(こえまつ)は、おもに四国の海岸沿いにある黒松の中から、わずかに見つかる希少なもの。日光に当てると年輪が美しい橙色に透けて見えるのは、それだけ油分を蓄えている証し。

「肥松は油分を多量に含むため、食用油を塗っては拭き取る作業を2~3年繰り返しながら、適度に油分を抜いていく。“油を油で制する”わけです。」

 しっかりと寝かせた木材は、ベルトの付いた誘導式のろくろ機に固定し、器の外側と内側を2段階に分けて仕上げていく。大きな音を立てながら回転する木の塊に丸ガンナを当てると、木屑がシュルシュルと四方へ飛び散り、角ばった木材が見事な丸い曲線を描き始めた。70年以上の月日を挽物に打ち込んできた古川さん。その作品は使い込むほどに深い光沢を生み、味わいを増す。まるで人生のようだ。

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10年寝かせたケヤキ

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(左から)器の内側を成型するときはハメ、外側のときはツメに器を固定させて、ろくろを挽く。荒削り用の丸ガンナや作品の形で使い分ける仕上げ用のキサゲなど、使い込んだ道具が並ぶ

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(手前から)肥松の天目台(茶碗を乗せる茶道具)、クスの貴重品入れ、黒柿の喰籠(じきろう)、ケヤキの菓子器。木の特長を最大限に引き出したものばかり【※作家さん所有の作品です】