IMG_1876.JPG【染織】
真弓工房
堀 絹子-熊本市-
1946年熊本県生まれ。倉敷の研究所で染織物について勉強した後、沖縄で琉球絣、岩手で羊毛と綿を使った染織物技術を学ぶ。独自の技術を確立し、染織物を展開。国展工芸部奨励賞受賞、県美会員


 染織の仕事を始めて41年になる掘絹子さん。絣(かすり)をはじめとするさまざまな技法を取り入れ、独自の染織技法を確立してきた。藍の絣になった布や草木染めの多彩な糸で織り上げた着物地など、触ると手に吸い付くようになめらかで、光の当たり具合によって気品ある光沢を放つ。

 まずは糸選びから始まるが「絹糸だけでも何万種類もの数があります。蚕が食べるエサや育ち方、糸の作り方によっても違いますから、選ぶ目も養う必要があるんです」。出来上がりは一枚の布だが、そこには見えない工程が山のように隠されている。

「デザインが決まったらグラフ用紙に図案起こし。1本1本が勝負ですから、いい加減には出来ません。糸の本数を計算して、1回染めるごとに色分けや防染を行っていく。さらに織り始める前には主となる経(たて)糸の位置を整えたりと、大変手間のかかる仕事です」

 1年織物の基礎を学んだ後、沖縄へ飛んで人間国宝である宮平初子さんのもとで絣について学んだ堀さん。その後、岩手県盛岡市で、木綿や羊の毛を使った織物の知識や技術を身につけた。

 「いろんな場所で学んだことを肥やしにしながら何とかここまできました。また、kと右京の日本民藝館展に出品し女美学長で審査員の柳悦孝先生よりご指導を受け、大変役に立ち勉強になりました。」

 アイデアは1年ぐらい前から考え始め、デザインが決まって仕事に取りかかるまでに半年。さらに仕事に入ってから4カ月近くかけて、ようやく1つの作品が完成する。

 「子供のころから着物が好きで、この道で1本立ちしようと決めていました。当時は工芸そのものがあまり盛んではなく、染め物や織物などのモノ作りを個人で行うのは珍しいこと。でも私にはこの道しかなかったし“何が何でも”という強い覚悟がありました」

 1日に織ることが出来るのは、20~30センチ程度。

「逃げ出したくなるときもありますが、山登りと同じで達成感があるんです。一つの工程が終わると次に進む楽しみがある。織り始めて柄が見えて来たとき、さらに嬉しさがこみ上げます」

 最終的に大事なのは、モノに対する“作り手の心構え”だとお語る堀さん。

 「それによって材料の選び方も変わりますし、使い手に対する想いが奥深くないと良いモノは出来ません。“堀さんの作品だから欲しい”と言ってもらえるモノを作り続けていきたいですね」

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こちらが図案。模様ごとに長さや幅、糸の本数なども厳密に書き記し、それをもとに必要となる糸の長さを算出。色まで忠実に着色される

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余った残り糸を巻き取る糸繰り道具(右奥)、ハタ織り機用の木枠に糸を巻き付ける道具(左奥)、草木で染めた絹糸

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先端が引っかけ状になった筬(おさ)通しを使い、均等に決まった本数を筬という織機の付属具に通して経(たて)糸の位置を整える。ハタ織り前に行う仕事だが、実に骨の折れる作業だ

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絹を使った着物地。グラデーションがかかっているように見えるのも、すべて計算によるもの。どこから裁断しても美しく見えるよう、緻密に色の配色が工夫されている【※作家さん所有の作品です】