IMG_4554.JPG【染色】
のはら で 染めもの
野原 れい子-宇土市-
1960年熊本市生まれ。1982年京都和染紅型・栗山工房入社。1992年京都で独立後、京都・大阪・福岡・沖縄各地で展示会を行う。2000年に帰郷、熊本県宇土市に住居と「のはら で 染めもの」を構える

 木綿や麻、絹など自然素材の風合いを生かし、素朴なタッチと楽しい配色で型染めされたのれんやタペストリーに愛着がわく。野原れい子さんが成人式のとき、袖を通した紅型(びんがた)の振袖が、型染めを始めるきっかけになったという。

「絞りが主流だった当時、1枚だけ見つけた紅型の振り袖があまりにもキレイで。これなら着てみたいと思ったんです。」

紅型は、沖縄を代表する伝統的な染色技法の一つ。野原さんの父親が沖縄出身だったこともあり、無意識に惹かれるものがあったのだろう。その後、「もっとたくさんの色を毎日見て暮らしたい」と一念発起。勤めていた会社を辞め、染色を学ぶために福岡の短大へ。卒業後は京都の紅型工房で10年間修行した。

「琉球紅型をアレンジした和染紅型というもので、沖縄らしい発色の鮮やかな古典柄に加え、京友禅の魅力を感じさせる図案と配色が特徴です。」
その後、京都で独立して5年間を過ごす。

「京都の工房は分業制で、デザインを起こしたり糊付けしたり染め付けするのは、それぞれ別の職人さんたち。何でも揃っていて便利な半面、全行程を一人で出来るのか自信がなくて。しばらくは作品をクラフトフェアに出しては直売するというスタイルで、少しずつ自信をつけました。」

こうして生まれ育った熊本に戻り、以前からやりたかった米作りが出来る環境をと、名水で知られる宇土市轟(とどろき)水源の麓に家と工房を構え、制作の傍ら田んぼを借りて、米作りも始めた。

 野原さんの作品は、年に1回開催されている宇土半島の工芸家による企画展や個展に向けた作品づくりのほか、お店からの注文によるのれん、タペストリー、テーブルセンター、小風呂敷など様々。作り方としては、最初に図案を起こして柿渋紙で型紙を作り、型板に張った生地に型紙を載せて餅米と米糠(こめぬか)で作った糊を置き、防染。乾いたら、板からはずして地入れ、地色や絵柄の染色を丁寧に施し、染まった布を30分ほど蒸し、その後水洗いで糊を落とす。

 何年でも使える定番の図案を作るのが目標という野原さん。

「好きなテーマは“春夏秋冬”。季節を彩る風景や色といった身近な題材を、暮らしの中にある布として表現したいですね。」

さまざまなモチーフの中でも、“種”には特別な思い入れがある。

「自然のプロペラで遠くまで飛んで行けたり、川や海に流れたり、動物にくっついたりして旅をしながら、繁殖先を見つけて発芽する。小さいのにすごい生命力を持つ種ほど、魅力的なものはないと思うんです。」

ほかにも節句や正月の鶴亀といった縁起の良い図案も野原さんの手にかかると愛らしく変身。ちょうど取材した時期は、野原さんが手塩をかけて育てた稲穂が青々と実り、黄金色の収穫期へと移り変わるころ。限られた時間の中で生き物たちが放つ生命の輝きは、野原さんの作品へと色鮮やかに写しとられていた。

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プロペラのついたモミジやベレー帽をかぶったドングリの絵柄に一つひとつ色をのせていく

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メッシュ状の紗(しゃ)で図案を固定させた柿渋の型紙、彩色用の筆、刷毛など

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布(綿、絹、麻、ウール)図案や使われる場所によって決める染料(植物染料、化学染料)布と用途によって選びます

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青空の下ですくすくと育ったわが家の田んぼを描いたのれん“早苗”【※作家さん所有の作品です】