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【イ草】
イ草工房 久保田栄一商店
久保田 栄一-荒尾市-
1937年生まれ。熊本大学教育学部卒業後、体育と英語の教鞭をとる。結婚後、1968年から義父の跡を継でイ草織機製造およびイ草商品販売の道へ。熊本県物産振興協会会員、八代よかとこ宣伝隊物産部会会員、熊本い草デザイン開発研究会会員として、イ草の普及活動に努める

 500年続いている畳表(たたみおもて)の原料、イ草。その栽培面積および生産量の90%以上を熊本県八代産が占める。そんな地元のイ草を使い、イ草商品を次々と生み出しているのが、久保田栄一商店の久保田栄一さんだ。
 教師をしていた久保田さんは結婚後、婿養子として後を継ぐことに。

「当時は高度成長期でイ草業界も活気があり、ピーク時には20人近くの従業員がいました。」

 もともとは畳表の織機をイ草農家に販売するのが主体だったが、日本人の生活様式の洋風化に加えて中国産畳表、化学繊維の畳表が普及。八代のイ草生産は今も減少傾向にある。

「昭和55年代には5500戸あったイ草農家も現在では700戸程度になりました。畳表の需要が減ったため、イ草商品を開発することにしたんです。」

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紋紙(もんがみ)

紋紙で織り方を読み込む織機のほか、最近ではコンピュータでデザインを読み取る織機も登場

スリッパなどの履物類から絵はがき、ランチョンマット、ペンケースにバッグ。様々ない草製品を開発してきたが、なかでも全国的に好評を博しているのが、熊本県優良新商品審査会で金賞を獲得した「イ草ジュータン“樹林”」だ。厳選したイ草のみを使い、縁や縦糸は綿という自然素材だけで作られている。ほかにも、コンピュータ制御の織機で作ったイ草むしろや、イ草縄のボコボコとした足ざわりが心地いいマット“猫伏(ねこぶく)”(熊本県優良新商品審査会銀賞)なども、フローリングに敷けばリラックスできると喜ばれている。

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猫伏(ねこぶく)

イ草縄のボコボコとした足ざわりが心地いい。

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イ草むしろはフローリングや玄関マットに好評。葉先が二股に分かれた松葉のように見える“松葉織”でクッション性を高めている

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イ草の縄を綾織りにしてボリュームを出した円座と柄入畳表で作った座布団。どちらもリバーシブルで使える【※作家さん所有の作品です】

 工場内にある20台以上の機械を稼働させ、独自の織り方などを工夫している久保田さん。原料に使うイ草は“ひのみどり”や“ひのさらさ”といった良質ブランドで減農薬のものを農家から取り寄せている。座布団などの中身には通常、ウレタンなどを使うが、こちらでは編み目の大きなゴザをわざわざ織って入れるなど、見えない部分まで自然素材にこだわる。

 「アイデアを練るのは好きですが、商品化してみて10分の1が残れば良いほう。世間に浸透するまでに10年近くかかりますから、まずは工芸展や審査会で評価していただくことが大切だと思っています。」

 伝統を守ること。それは、新たな開発をしながら継続させていくことだと久保田さんは自信を持って答えてくれた。