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【イ草】
Yoneo企画
坂井 米夫-八代市-
熊本にイ草が伝来した地といわれる岩崎神社の目の前(八代郡千丁町大牟田)で1952年に生まれる。1970年から農業を開始。米、イ草の無農薬無化学肥料栽培に挑戦する傍ら、1990年頃からイ草商品開発。2005年から本格的に販売を開始

 美しい山と田園風景に囲まれた八代郡千丁町大牟田。家の目の前に敷かれた線路の上を、SL人吉号が噴煙をあげて通り過ぎて行く。イ草を生産・直売している坂井米夫さんは、高品質の自家製イ草を使った玄関マットや寝ゴザも作っている。「家のそばには、今から500年以上前、熊本県にイ草を持ち込んだ始祖を祀った岩崎神社があり、昔は大牟田表といってこの周辺だけでイ草が作られていたそうです。畳表(たたみおもて)の原料となるイ草は、熊本が一大産地。全国的な生産量の90%を超えますが、年々需要がなくなり、イ草農家も20年前と比べて10分の1以下になっています」。

 良いイ草を作るため、一つの圃場(ほじょう)(水田)でイ草と米の二毛作を行っている。「イ草の根は弱いので、米を栽培したあとだと育ちやすいんです」。12月から7月にかけて行われるイ草栽培は、まず圃場を耕して自家製堆肥やボカシ肥料を散布。株分けした苗を植え付けていく。有機肥料やボカシを施肥しながら、ゆっくりと生育を待って刈り取り。このあと、イ草の耐久性を保ち色落ちを防ぐために泥染めを行うが、これがイ草特有の癒される香りのもとにもなっている。「川辺のイ草に洪水で泥が付き、乾燥させたら良いイ草が採れたという偶然から起こったと言われています」。

 イ草グッズを作り始めたのは、2007年。「数年前、ある式典で小さな敷物を貰って3年ほど置いていたら、汚く黒ずんでしまって。ずっと前に自分の畳表で作った敷物は、今でもキレイなんですよ。小物だからと質の良くないイ草が使われているのが納得できなくて。私は原料を生産する側ですから、依頼があるたびにイ草の良い部分で玄関マットなどを作っているうち、イ草グッズも取り扱うことになったんです。」

 坂井さんのイ草グッズで大きな特徴なのが、無農薬イ草や“燈芯草(とうしんそう)”を使っていることだ。和ロウソクの芯として使われいた燈芯草は、通常のイ草と比べて2〜3倍、2m以上にまで生育。綿状の芯が多く、クッション性にも秀でている。燈芯草の苗は入手が困難なため、研究者の知人から一株だけ分けてもらい、大切に増やしてきた。苗を株分けすると半年で20倍、1年で400倍にまで増殖するという。「燈芯草おはもに“寝転びマット”などに用いています。ほかにも品物によってイ草を使い分けますが、汚れや湿気、ニオイを吸着するので、玄関マットも好評です」。

 除草剤や殺虫剤に頼らず、植物たちと共生しながら持続できる農業で子供達の未来を守りたいとの思いから、坂井さんは無農薬無化学肥料栽培のイ草づくりにも挑戦している。



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▼手元

厚手用のミシンで縁(へり)を縫い付けていく

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苗の良い部分だけを選んで約6本単位で株分けしていく

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▼作品

コンパクトに巻いて運べる寝転びマットは、寝心地をよくするため、織り方の間隔を大きくしてある【※作家さん所有の作品です】

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▼材料

太い方が燈芯草、細い方が通常の種類。燈芯草の芯はスポンジ状になっていて、手触りも柔らかい