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【和ろうそく】
侍街道はぜのき館-水俣市-
侍街道一帯で日本一の生産量を誇るはぜの木の産地の歴史を学び、ろうそく作り体験ができる施設として1993年に「侍街道 はぜのき館」が開館

 現在、ろうそくとして販売されている大半は石油由来のパラフィンが原料だが、電灯が普及する明治以前の日本は、櫨(はぜ)という木の実から出来た和ろうそくが使われていた。時代劇などでも見かける和ろうそくだが、当時の庶民にとっては高級品。殿様や武家など身分が高いか商家といった裕福な人しか手に入らなかったという。そこで熊本県内では、江戸時代から肥後藩の経済政策によって、はぜの植栽を推奨。当時の生活に不可欠だったろうそくを生産することで収入の増加を図っていた。

 現在も全国に流通するはぜの実の約30%以上が熊本県産で日本一。そのほとんどを熊本と鹿児島の県境に位置する水俣産が占めているが、今でもたくさんのはぜの木が残っているのが侍地区などの丘陵地一体。そしてこの地で昔ながらの和ろうそくを作っているのが、「侍街道はぜのき館」だ。

 その昔、水俣から鹿児島県出水市にかけて侍たちが往来したといわれる通称“侍街道”沿いに、当時の茶屋を再現して建てられた。スタッフの上田きよ子さん(画像)と釜田きよみさんが交代で和ろうそく製作とろうそく作り体験教室(体験の材料はパラフィン)を行っている。

 ろうそく作りは、晩秋から初冬にかけて収穫したはぜの実を粉砕して蒸し、圧力機にかけて液化したろうを抽出。これを冷却させて生ろうを作り、再び熱で溶かして木型に流し込み、20分ほどかけて固めていく。原料は同じでも、収穫した日や木の違いによって乳白がかったものから淡緑色まで色合いが異なる。

 はぜの実でできた和ろうそくは煙が少なく、煤(すす)が出にくい特長をもつ。また芯が空洞になっているため、中の空気が作用して炎がユラユラと揺らめくさまも、おもしろい。柔らかな炎に心安らぎながら、江戸を生きた人々の暮らしに思いを馳せてみては、いかがだろう。



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草花を模様付けしたものから、はぜの実の色を生かしたもの。【※作家さん所有の作品です】

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建物のすぐ裏手にあるはぜの木。11月中旬~12月が収穫期

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はぜの実を溶解して液化した生ろうと芯。芯は、筒状の和紙にい草(灯心草)の芯を巻き、蚕の繭(まゆ)で固定したもの

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木の台に灯芯(とうしん)を固定し、木枠の中に生ろうを流し込む