松永 弘澄

【肥後三郎弓】
松永 弘澄
-葦北郡芦北町-

 

現在3代目として「肥後三郎弓」の技を受け継ぐ

松永 弘澄

薩摩弓の強と京弓の優美さを兼ね備えた肥後三郎弓。
弓は外側の竹に7節、内側に6節の13節という構成が基本。2枚の竹に中忌(ひご)と呼ばれる芯を交互に挟むが、その材料となるのが真竹とハゼの木。3〜4年ものの真竹は肌が美しく節が低いものを霜の降り始める晩秋に切り出す。ハゼの木は痩せた土地で育ったものほど中身が詰まり、電柱の如く直立したものが理想だ。ハゼは弾性に優れて、元に戻ろうとする性質をもつ。これを真竹で包むことで強靭なバネの働きを発揮する。
真竹とハゼの木を接着させるニベは、鹿の皮を煮詰めたもの。手間がかかるため、ニベを使っている弓師は日本で片手にも満たないという。湿度や高温に弱いが、弦楽器と同じく弓を弾いたときの響きが格段に優れている。
「引き際が肝心」と80歳の節目を迎えて重昌さんは勇退。今は弘澄さんが一人で仕事に励む。「材料選びやニベの煮方一つで仕上がりが微妙に変わります。一生涯、出来映えに満足することはないでしょう」とは3代目の弘澄さん。
弓にクサビを打ち込む“弓打ち”は、午前2時の張りつめた空気の中、精神を統一して魂を込める。心技体を鍛え抜き、生み出された肥後三郎弓。その名は弓道界に永く受け継がれ、弓道家にとって憧れの対象となり続けるだろう。