金刺 潤平

【手漉和紙】
金刺 潤平(かなざし じゅんぺい)
水俣浮浪雲工房(みなまたはぐれぐもこうぼう)
-水俣市-

 

1959年静岡県沼津市生まれ。
上智大学を卒業後、フリースクール水俣生活学校のボランティアとして熊本県水俣市へ。
1984年胎児性水俣病患者ら5人で手漉き和紙と織物の工房を設立。
1991年第5回世界竹会議で竹紙のオブジェを製作。
ブラジルやアマゾンでのワークショップをはじめ、高機能イグサパルプの開発で第2回ものづくり日本大賞優秀賞受賞。
資源を有効活用した和紙素材の開発に取り組む。
水俣市環境マイスター

金刺潤平

水俣市の山中、フリースクール跡地。ここを工房兼住まいにした「水俣浮浪雲工房」で、金刺潤平さんは黙々と紙を漉いています。
和紙の原料として一般的なのはコウゾや雁皮(がんぴ)、ミツマタですが、金刺さんはそれらに加えて竹やい草など紙漉きには不向きな素材にも挑戦してきました。そこには水俣病を題材にした小説『海の牙』などで知られる小説家・故水上勉さんの言葉が大きく影響しています。「縁あって彼に手漉和紙を見せると、“良い材料で良い紙が出来るのは当たり前。お前たちのような環境にいる者が、どうして見捨てられた植物たちに目を向けられないのか”と問われて、ズシリと胸に突き刺さりました。以来、廃棄される素材を和紙で生き返らせることが大きなテーマとなったんです」。親方衆による後押しもあり、高知県で本格的に和紙漉法を習得。繊維化するのは不可能と思っていた竹も、石灰水に長期間寝かせて化学発酵させることで、硬い成分のリグニンを溶かせると分かったそうです。熊本を代表する農産物・い草に関しては、生産量の半分が規格外として処分されることを知り、素材の利点を生かせないかと研究。高い吸湿性をもつ芯を混ぜた高機能和紙壁紙素材を開発し、第2回『ものづくり日本大賞』優秀賞を受賞しました。海外から誘いも多く、ドイツやマレーシア・ウズベキスタンなど数えきれないほどの国々で紙漉きの技術を教えてきました。燃料には薪を使い、漂白剤のかわりに天日乾燥による紫外線で自然漂白。「指先や嗅覚にも感覚障害をもった彼ら(胎児性水俣病患者)との出会いがなければ、ここまでこだわらなかったかもしれません。時間が経って色落ちしたっていい。それが自然の姿なのだから。最後まで、天然にこだわっていきたいんです。」と金刺さん。