福吉 浩一

【陶磁器】
福吉 浩一(ふくよし こういち)
泗水窯(しすいがま)
-菊池市-

 

鹿児島県出身
九州産業大学芸術学部卒業後、日展作家の大畠久氏に師事
1981年に菊池郡泗水町で開窯
くらしの工芸展グランプリ、21世紀アート大賞次席、西部伝統工芸展など受賞歴多数、日本伝統工芸展では連続入選
2001年に秋篠宮家に炭化象嵌線条文花器を献上
日本工芸会西部支部幹事、熊本大学講師

福吉 浩一

緻密に計算された段取りと、それを根気強く続ける努力。高いプロ意識で焼物に取り組む福吉浩一さんの作品は凛として何事にも物怖じしないかのような風格と緊張感を放ちます。
大学を卒業後、鹿児島県在住の日展作家・大畠久さんのもとで修行。
「師匠は造形を追究される方でしたから、私もその影響を受けました」
出身は鹿児島ですが、父の定年を機に熊本へ。母の実家がある菊池市泗水町で窯を開きます。福吉さんの焼き物は、一般的にはなじみの薄い炭化焼き締めという焼き方。釉薬をかけずに高温度による強い還元炎状態で燻(いぶ)し焼く特殊なものです。窯に薪を入れて密閉し、不完全燃焼のままスモークのように燻すことで素地が炭素を吸着し灰黒色になり、硬く焼き締まります。焼き上がりが安定しないため、何度も失敗を重ねたといいいます。
「窯の中で煙をコントロールするのは、難しくて。最初は作品の半分が白く、残り半分が真っ黒に焼けたりしたものです」
数えきれないほどの器を焼いてはデータを取り、調整を重ねてきました。
近年は、炭化焼き締めにさらに象嵌(ぞうがん)を施すというステージへ。象嵌は生地に溝を彫り、異なる素材を埋め込むことですが、福吉さんの作品はここでも緻密さが際立っています。まるでコンピュータで描いたように等間隔で伸びる細い線。1本の線の中に10色ほどの粘土を埋め込み、色の配置を一線ごとにずらしながら、見事なまでのグラデーションを織りなしています。よく見ると器の曲線に従いながら線が中心に集まっているのが分かります。定規状の型紙を線ごとに作り、少しずつ太さや角度を調整しているので「粘土の配合で伸縮率が変わるため、これを統一しないと隙間やヒビ割れを起こしてしまいます。細か過ぎて途中でやめたくなることなんて、しょっちゅうですよ(笑)」。
福吉さんにとって、1にも2にも段取りが命。
「焼物の都合に、自分が合わせているという感覚ですよ」
象嵌以外にも力を入れているのが練り上げで、異なる色の粘土を貼り合わせ、ねじりを入れながら模様を作ります。中国の唐の時代に行われていた古陶磁であり、人間国宝の松井康成(こうせい)さんが練り上げの追求者として知られ、新しい技法を次々と発表しました。松井さんの技を伝承する10人のうちの1人に福吉さんが選ばれ、2年間定期的に茨城まで通いながら技を受け継ぎました。
「緻密に計算して段取りを組まないと出来ない作品ばかりですから、数が作れないぶん、1点ごとに妥協はしたくない。焼き物は、割れなければ何百年でも残るものですから、そのときの自分が出来るベストなものを作っていきたいですね」