溝口 あけみ

【染色 形絵染】
溝口 あけみ(みぞぐち あけみ)
-熊本市-

 

1951年熊本県生まれ
1978年日本工芸会正会員釜我敏子氏に師事、型絵染を学ぶ
2006年アメリカ・テキサス州立南テキサス美術館の企画で個展開催
2007年熊本県伝統工芸館で南テキサス美術館展覧会記念展
2009年西部伝統工芸展旭日新聞社大賞受賞。日本工芸会正会員

溝口 あけみ

城下町・新町にある昔ながらの町家。一番奥に設けた作業場で、奥行き一杯まではり巡らせた布地に色を挿していた型絵染作家の溝口あけみさん。布地の上に型紙を重ね、生地色を残したい部分に糊を乗せて防染。5、6回ほど色を挿す際は、色によっての刷り込み刷毛を使い分けている。
「糊がふやけないよう、手際良く済ませるのがコツです。」
ちょうど作業をしていたのは、竹をモチーフにした帯地。帯を巻いたときにどの柄が表に現れても映えるよう、型紙をわずかにズラして、竹の葉に躍動感をもたせている。
10代のころは服飾デザイナーに憧れ、高校、専門学校とファッションを勉強してきた溝口さん。専門学校在学中に開催されたファッションショーでろうけつ染めのイブニングドレス制作に携わり、和装の世界に興味がわいた。型絵染は模様作り、型紙彫り、地染め、色挿しなどの工程を一人で行うため、分業制とは異なり作家の個性が大いに発揮される。家の近くに咲く草花など身近な自然を題材に、柔らかな色彩と大胆な構図を着物や帯に表現してきた。
防染用の糊は、専用に作られた上等米の小紋糠(こもんぬか)と餅米をあわせて硬さの具合を見ながら調整。型紙を強化するために絹地の紗(しゃ)は、漆で接着している。手間も材料費もかかるが、昔ながらのやり方を守り通すのには理由がある。
「料理と同じですよ。手抜きをせず、基礎からやり方を身につけていれば、どんな応用も利きますから。」
三重県伊勢の和紙職人から型紙用の柿渋和紙をわざわざ取り寄せているのも、職人文化を残していきたいとの思いから。
色を挿した後は銅製の蒸し器で約1時間蒸し、水の中に浸けておくと糊だけが浮き上がる。水を取り替えながら10数回すすぎ洗いし、蒸気をあてながら乾かす“湯のし”をすれば完成だ。
「蒸すときに湯気が均等に回らず、ムラになることもあるため、火力の調整には注意を払います。でも、失敗したときこそ気づきも生まれると思うんです。」
困難を前にしても逃げることなく、自らの足で山を登り詰めてこそ見える景色がある。そして、より高い山へと挑戦できるのだろう。