高本 純

【染色】
高本 純(たかもと すみ)
-熊本市-

 

染織を始めて25年になるという高本さん。染織に出会ったのは、大学を卒業し小学校の教師として勤め始めたころ。水俣病のことも児童に正しく伝えたいと、自分自身が学ぶために水俣に通い始めました。そこで水俣在住の染織家・金刺宏子さんに出会い、昔ながらの綿紡ぎの手法を知ったのです。また、戦争の足跡をたどるために訪れた沖縄で、紅型(びんがた)や芭蕉布(ばしょうふ)といった伝統の織物に触れる機会があり、独特の染織の技法・文様などに衝撃を受けました。
「パワーにあふれ、自分の気持ちに素直に生きている小学生たちに接しているうちに、“私もそうやって生きていこう!”と思ったんです」と高本さん。2年の勤務を経て小学校を退職し、京都で2年間染織の基本的な技法を習得。さらに栃木や兵庫、徳島で綿の紡ぎ方や藍染めを学びました。
7年間ほど種から綿を育てていた時期もあり、収穫した綿やニュージーランドから取り寄せた羊毛で糸を紡ぐところから始めます。糸を染めるのはクリのイガ・アカネの根・ヨモギ・桜や梅の枝・ハーブ、そして木灰汁(もくあく)や石灰などで発酵還元させた藍といった天然の染料のみ。「合成染料のようにいつも手に入るわけではありません。『ヨモギがたくさん出始めたよ』『桜の枝を剪定したから取りに来る?』など、知り合いの方にご連絡をいただいて集めています。」
高本さんの作品は、時にふんわりと柔らかく、時にはっきりと主張するように、一つ一つが異なる表情を見せます。「作品の風合いや表情は、糸の選び方や組み合わせによって決まる気がします。糸を生かすも殺すも私次第。だからこそ糸を手紡ぎする工程を大切に、力を注ぎたい」と、高本さん。ひと織りごとに思いを込め、経糸(たていと)に緯糸(よこいと)をタンタンと織り込んでいくうちに、高本さんいわく、“自由な線の集まりである糸”が、生命力あふれる布に生まれ変わるのです。