やま鹿とうろう

やま鹿とうろうとは?
やま鹿とうろうは熊本県に4つある国指定の伝統的工芸品の1つで、山鹿灯籠まつりは全国的に有名です。灯籠師が大宮神社に奉納する「奉納灯籠」や、灯籠踊りを踊る際に頭に載せる「金灯籠」をはじめ、様々な灯籠が作られています。

金灯籠

金灯籠

やま鹿とうろうの特徴について
やま鹿とうろうは、紙と糊だけで作られる立体的な構造で糊しろがなく、細かい部分まですべて中は空洞になっています。
金灯籠の他、有名な建物や神殿を模した作品も作られます。建物を模した作品は、20分の1か30分の1の大きさで作られますが、作品を低めに置いて見るので、実在感を出すために縦は2割から3割大きめに作られています。

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制作されている地域
山鹿市
材料
和紙、糊
工芸品や技法の特徴
紙と糊だけで作られ、中は空洞になっている。
国指定の伝統的工芸品
やま鹿とうろうは、2013年(平成25年)に経済産業省から国の伝統的工芸品に指定されました。

 

国の指定マーク

やま鹿とうろうは、熊本県に4つある国指定の伝統的工芸品の1つで、熊本県の代表的な工芸品の代表にあげられます。

伝統的工芸品とは ▼

・主として日常生活の用に供されるもの
・その製造過程の主要部分が手工業的
・伝統的な技術又は技法により製造されるもの
・伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるもの
・一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているもの
上記5つの項目を全て満たし、伝統的工芸品産業の振興に関する法律(昭和49年法律第57号、以下「伝産法」という)に基づく経済産業大臣の指定を受けた工芸品のことをいいます。

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やま鹿とうろうの歴史

やま鹿とうろうの歴史
第12代景行天皇の筑紫路巡幸の際、霧に進路を阻まれた一行を山鹿の里人が松明を掲げて迎えたという故事があります。
その後、これを記念して松明を行在所跡(現在の大宮神社)に献ずる火祭りの行事が行われていましたが、約600年前の室町時代に、金灯籠を模した紙細工を奉納するようになったのが山鹿灯籠の始まりといわれています。

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やま鹿とうろうと和紙
熊本の和紙の製造は、中世に始まり、江戸時代にはんしょくさんせいさくもあって発展し、明治から昭和にかけては全国でも上位の紙の産地となっていました。鹿本地方では、こうぞの生産が盛んで、加藤清正に伴って来た朝鮮の技術者、どうけいけいしゅんなどによって和紙製造の技術が
伝えられ、生産された和紙は、山鹿灯籠や江戸期から昭和初期にかけて作られていた山鹿傘などの紙工芸の原料として用いられました。
その後、鹿本地方の和紙の生産は途絶え、現在、山鹿灯籠の和紙は、原料となる楮は鹿北農家でわずかながら栽培されていますが、福岡県市で漉いて取り寄せた特注品の和紙を材料として使っています。

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やま鹿とうろうのエピソード

「名所名物東肥名寄」より ▼

幕末、江戸に長期滞在し、熊本の名所や名産品について江戸での評判を調べた熊本藩士の松本恒正は、その著書「名所名物東肥名寄」のなかで、山鹿灯籠について次のように書いています。
「山鹿灯籠は山鹿市で作られ、7月16日の夜に灯して大宮へ献上する。名物ではないが、珍しい紙細工で、熊本からだけではなく、多くの場所から見物人が来ている。大中小あるが、大きいものは更に見事である。宮殿楼閣のような大きなものも、柱に骨を用いず全て紙で作られた精巧な細工である。これ程のものは都会でも諸国でも見聞きしたことがなく、見物の旅人が珍玩している。」
山鹿灯籠が、当時としても珍しく、評判が高かったことが分かります。

松本恒正「名所名物東肥名寄」

1861年(文久元年)より

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「嶋屋日記」より ▼

菊池郡隈府町(現菊池市)の商家嶋屋によって書かれた「嶋屋日記」の延宝2年(1674)には、次のような出来事が書かれています。
「7月16日、灯籠見物の帰り、にわか雨によって川の水が増し、山鹿湯町にて川船で男女21人ほどが死す。」
少なくとも17世紀中頃には山鹿灯籠まつりが一般化していたことが分かります。この日記が、現在史料でさかのぼれるもっとも古い記述です。

「嶋屋日記」より

1672年(寛文12年)より

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「鹿郡旧語伝記」より ▼

山鹿郡の地誌「鹿郡旧語伝記」には、次のように書かれています。
「宝暦4年(1754)9月、藩主細川重賢が灯籠を御覧になりたいと仰せになり、早速作成し、重賢が執務を行う熊本御花畑屋敷に灯籠を納品し、銀十五枚を拝領した。このとき、細工人13人も屋敷内に入ることを許され、灯籠を納めて帰った。その後、山鹿で狩りをされるとき、度々灯籠をご覧になった。」
「細工人」とあることから、ここで納品されたものは石の灯籠ではなく、紙灯籠であると考えられます。

「鹿郡旧語伝記」

1754年(宝暦4年)9月より

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「山鹿燈籠見物記」より ▼

文化年間(1804?1817)頃に書かれた「山鹿燈籠見物記」には、7月16日のまつりの様子が記されています。
奉納された灯籠について、「油屋 金灯籠八ツ」「綿屋 金灯籠弐ツ」などと書かれており、全体で金燈籠124個が山鹿大宮神社に奉納されていることが分かります。
現在の奉納数は約30個ですので、当時、金灯籠の奉納数が多かったことが分かります。

「山鹿燈籠見物記」

1804〜1817年(文化年間)頃より

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やま鹿とうろうの製作工程

@部品切込み工程

1.裏打ち
金灯籠の素材となる灯籠紙を作ります。金紙に糊を塗り、その上に和紙を貼り合わせ、厚く丈夫にするために裏打ちをします。
2.つき
灯籠紙の上にがみを置きます。歩紙とは、伝統的な灯籠の寸法を紙等に刻んだもので、規格ごとに穴が空いています。この穴に押針を刺し、下に置いた灯籠紙に点穴を付けます。この点穴を目印に、天井・六角・束柱等の直線角材部分を切り出します。

歩つき

3.ようがいひき
歩つきをした灯籠紙の点穴と点穴との間を蛍貝という金属製のヘラでなぞり、節目をつけます。
4.天井切り・六角切り・束柱切り
歩つき、蛍貝ひきをした灯籠紙を切り取り線に沿って小刀で切り離します。天井・六角・束柱等の各部品を切り離します。
5.雛形取り
わらび、足、手びれ、足びれ、底紙と呼ばれる各部品は、伝統的に規格された雛形から型紙を作ります。
6.型紙毛がき
雛形取りした型紙を灯籠紙の上に乗せ、鉛筆にて模写することを型紙毛がきといいます。これは湾曲した部品製作に使用するもので、型を崩さないために工夫されたものです。
7.擬宝珠切り・蕨手切り・足切り・手びれ切り・足びれ切り・底紙切り
型紙毛がきをした灯籠紙を切板の上に乗せ、切取線に沿って小刀で切り離します。

蕨手切り

8.毛がき
歩紙や型紙を使用せず灯籠紙にコンパス、定規等を使って鉛筆で直接各部品の型取りをする技法です。台座、欄間、灯袋、弓、紋柱、紋、紋紙等の部品制作に用いられます。
9.台座切り・欄間切り・灯袋切り・弓切り・紋柱切り・紋切り・紋切り
毛がきをした部品を切り取ります。
10.ポンチ打ち抜き
灯袋や欄間は、六角形の形状のポンチを使用しハンマーで叩いて穴を空けます。

 

A部品糊つけ工程

11.そくい糊作り
そくい糊は日本全国至る所でいろいろな細工物用として使われている「米飯粒」と同様ですが、山鹿灯籠に使用する場合は良質の米が必要となり、さらに炊き具合に修練を要します。現在は、強度及び作業効率や虫食・カビ防止の面から水性接着剤を使用しています。
12.擬宝珠小口つけ
部品切込工程にて切離した6枚の部品(擬宝珠紙)を1枚ずつ掌の上に乗せて「こね」て、各1枚ずつ小口つけをします。「こね」とは紙を湾曲させる技法をいい、小口つけとは、糊しろを作らず紙の厚みのみに、そくい糊をのせ貼り合わせる技法をいいます。
13.蕨手置揚げ・足置揚げ・弓置揚げ
2枚同時に切り離した灯籠紙の側面に紙を小口つけします。2枚の灯籠紙を繋ぎ空洞を作るように巻いていく紙を、置揚げ紙といいます。置揚げ紙を「こね」ながら巻くように糊づけします。

蕨手置揚げ

14.天井糊しろつけ・台座糊しろ・六角糊しろつけ・束柱糊しろつけ
天井・台座・六角・束柱は、小口づけせず、糊しろを造ってそくい糊で貼り合わせます。

六角糊しろつけ

15.手びれこね・灯袋こね・足びれこね
手びれ、灯袋、足びれ等は糊つけを必要としないものですが、曲面に密着させるため、それぞれの部品紙を掌の上に乗せ密着させる曲面に応じて竹筒で「こね」て曲面を出します。その他、「こね」の作業は擬宝珠・蕨手・足・弓等を製作する際にも行います。

 

B全体組み立て工程

金灯籠組み立て前

16.灯袋造り
上下の六角の間に6本の弓を接着し灯袋を造ります。
17.地窓造り
灯袋の下部に地窓を造ります。
18.天窓造り
灯袋の上部に天窓を造ります。
19.紋造り
まず、灯袋の中に紋を入れるための紋柱を造ります。灯袋の六角の内面に6本の紋柱を各角に接着します。
その後、各紋を糊つけした紋紙を紋柱の内面に接着します。
20.底紙はり
六角の底部に底紙を貼付けます。
21.足つけ
六角の角の中心部に6本の足を接着後、足の内面に沿って12枚の足びれを糊つけします。
22.蕨手つけ
六角の角の中心部に6本の蕨手を接着後、蕨手の内面に沿って各6枚の手びれを糊つけします。
23.擬宝珠造り
天井の上面中心部に台座を糊つけした後、台座の上に擬宝珠を乗せ糊つけします。
24.天井はり
蕨手つけにて糊つけした手びれの上面に天井を接着します。
25.点検
上下各6か所に糊つけした蕨手と足の高さを揃えます。このとき、上から蕨手・束柱・弓・紋柱・束柱・足の部品にずれがないことを確認します。

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やま鹿とうろうアーカイブ映像(Youtube)

映像でみる山鹿灯籠の製作工程
中島清 氏 アーカイブ映像

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やま鹿とうろうの工芸家紹介

※現在製作されていない工芸家も掲載しています。

糸山国雄
今村時子
牛嶋富士子
宇野敬次郎
宇野道子
角田利助
坂本ゆかり
斎藤
田中久美子
コ永正弘

中島二人
中島清
中島弘敬
中島悦子
中島光代
中村潤弥
畠山慶司
林田喜久彦
松本マサカ
宮田惣作
宮田誠三
森誠也
山口正
山下辰次

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やま鹿とうろう作品紹介

金灯籠

金灯籠

 古今伝授の間

山鹿灯籠
古今伝授の間

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About Yamaga Lanterns

Kanadourou

 Yamaga Lanterns

Yamaga lanterns, also called Yamaga-toro, are created using only washi paper and glue to create a three-dimensional shape. These lanterns originated about 600 years ago in the Muromachi Period when paper lanterns made to look like gold lanterns were offered at Yamaga’s shrine during the fire festival. In addition to golden lanterns, there are pieces crafted to look like famous buildings and shrines. There is no overlap in pieces of paper when pasting together Yamaga lanterns, and the structures, no matter how small, are hollow.
The Yamaga Lantern Festival takes place every year on August 15 in Yamaga City.
During the festival, women wear these paper-made imitation gold lanterns on their heads and dance, while paper lanterns shaped like various buildings are presented as offerings to the local shrine.

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