工芸家プロフィール
インタビュー記事(2010年頃)
薩摩弓の強と京弓の優美さを兼ね備えた
真竹とハゼの木を接着させるニベは、鹿の皮を煮詰めたもの。手間がかかるため、ニベを使っている弓師は日本で片手にも満たないという。湿度や高温に弱いが、弦楽器と同じく弓を弾いたときの響きが格段に優れている。
「引き際が肝心」と80歳の節目を迎えて重昌さんは勇退。今は弘澄さんが一人で仕事に励む。「材料選びやニベの煮方一つで仕上がりが微妙に変わります。一生涯、出来映えに満足することはないでしょう」とは3代目の弘澄さん。
弓にクサビを打ち込む“弓打ち”は、午前2時の張りつめた空気の中、精神を統一して魂を込める。心技体を鍛え抜き、生み出された肥後三郎弓。その名は弓道界に永く受け継がれ、弓道家にとって憧れの対象となり続けるだろう。