工芸家プロフィール
きじ馬や花手箱などの郷土玩具は、約800年前に平家の落人によって始められたとされ、木材に赤、黄、緑、白の鮮やかな色彩が特徴です。
毎年旧暦2月に開催される人吉の春の市では、露天に並ぶ「きじ馬」を男の子に、「花手箱」を女の子への土産として買って帰るのが習わしとなっていました。
住岡忠嘉氏は、次第に作り手が減るなか、きじ馬・花手箱の復興に努めた初代の意志を受け継ぎ、木材と道具を見事に使いこなす匠の技で製作を続けています。
1988年くらしの工芸展入選。1989年と1990年には日本グッド・トイ100選に「きじ馬」と「花手箱」が連続で選定されました。九州自動車道の人吉〜八代間、肥後トンネル出口(人吉側)には住岡氏がデザインしたきじ馬と椿を見ることができます。
インタビュー記事(2010年頃)
約800年前から始まったといわれる人吉球磨地方ではなじみ深い郷土玩具のきじ馬・花手箱・羽子板。一時は廃れようとしていたこの郷土玩具を、初代・住岡喜太郎さんが苦労の末に復興しました。現在はその意志を受け継ぎ、2代目の
額に刻まれた「大」の字に子供の成長の願いを込め、端午の節句に飾られているというきじ馬。「大きなきじ馬は、新築祝いや開店祝いに贈ると、人が集まると喜ばれていますよ」と、るい子さん。また、黒い縁どりと白地に描かれた鮮やかな椿が特徴の花手箱は、要望に応じて花の大きさや数・配色を変えたりと注文にも応じてもらえます。箱形に組んだ木を接着剤が乾くまで固定したあと絵付けを施していきますが、顔料に代わって現在使われてるのは、小さい子どもが誤って舐めてしまっても害のない水性絵の具。色の塗り方にも決まった順番があり、乾けばほとんど色落ちすることはないそうです。昔ながらの手法を守りつつ、きじ馬はキーホルダーやタイピン、耳かきに。花手箱は筆箱や箸入れ、ティッシュケースにと、現代のニーズに合わせた商品を開発。こうして形を変えながらも継承することこそ、伝統工芸の本来の姿といえます。