工芸家プロフィール
肥 後 てまり同 好 会 について
インタビュー記事(2010年頃:鶴田美知子 氏)
肥後てまりは芯にへちまを使います。脱脂綿でへちまを包み、木綿糸で土台の球を作っていきます。これを均等にぐるぐると巻きつけるのが至難の業。同好会代表の鶴田美知子さんは、一見いとも簡単に手触りひとつで糸の巻き具合を調整します。出来上がった真っ白な土台に、次は刺繍の目印になる基礎線を入れて、肥後てまりの特徴でもあるカラフルな光沢のあるフランス糸でかがります。肥後六花や麻の葉模様などの伝統的な図柄から、鶴田さんがオリジナルであみ出した素敵な模様の肥後てまりまで、糸の配色によって同じ柄でも全く違った印象に見えてきます。この配色を決めるのも長年の経験とセンスが光る部分。一つ一つ針を通していく作業は気が遠くなります。「長時間座っての作業はとても時間がかかる上、結構大変な作業なんですよ」と鶴田さんは笑顔で話してくれます。
てまりの発祥の由来は各説があり定かではありませんが、7世紀半ばごろ皇極天皇の頃に中国から伝わったとされています。平安時代には貴族文化として蹴鞠として遊び道具や神事・祭具に利用されました。鎌倉時代には蹴鞠に代わって、上に放り投げて遊ぶ宮内の遊び道具として用いられました。江戸時代には武家のお女中たちによって華やかな柄が作られるようになります。江戸時代後期にはまりつきが登場し広く一般に伝わりました。「この肥後てまりは繊細な糸と柄で作られているので、蹴鞠のようには遊べません。女の子同士がおひな祭りなどで各家に持ち寄り、お互いのまりを見せ合い自慢しあったりして遊んでいたようですよ。女の子たちの健やかな成長を願い、一針、一針想いを込めて作られたのでしょうね」