インタビュー記事(2010年頃)
20代のころに3年かけて自転車で日本一周。旅の中で木工へ関心を持ったという岡部芳典さん。
「北海道のユースホステルで手伝いながら木工芸をしている人たちと出会い、おもしろいなと思って。旅が終わってからは福岡県大川市の木工所へ就職しました」
そこで11年間家具作りに携わり、その後さらに11年間、植木町では別の仕事に就きつつも趣味と実益を兼ねて木工芸を続けてきた。「その間の4年間、土地を探して今の場所を見つけました」
現在、工房を構える場所は、南阿蘇村河陰の南外輪山のふもとにある。芝生と木々に囲まれた、童話の世界のような場所だ。
芳典さんが手がける家具や小物は、とにかく見ていて楽しい。ダイニングチェアの背もたれに木の芽のカタチを掘り出してあったり、クジラのシルエットのテーブルと、尻尾のカタチを背もたれにしたダイニングセットを作ったり。「自然造形美を残しつつ、遊び心を取り入れています」という一点物だ。 木材は宮崎や福岡、地元熊本から仕入れているが、とくに好んで使っているのがクスノキ。
「加工しやすくて香りがいいのと、熊本の県木ですからアピールしやすいですし。一般の木材市場では流通していないので、特別なルートで入手しています」
作る物に対して、どの木材を選ぶかが難しいと語る。最近では、ナイフのカット部分を生かした手彫りのペンダントやスプーン、箸などの小物にも取り組んでいる。
家具と並び人気なのがパズル組木で、パーツになった木がパズル状に組み合わさった玩具だが、こちらは妻・とし子さんが製作を担当。まったく未経験だったというが、芳典さん指導のもとで技術を覚えた。
「不器用だったので、最初は刃を折ったり穴をあけたり。」
デザイン画を木に貼付け、糸ノコギリでパーツごとにカット。2種類のサンダーを使い、パーツに丸みをもたせていく。組合わさる部分は削りすぎないよう気をつけながら調整していく。複雑なものだと40個ほどのパーツを組み合わせ、2日がかりで完成。木ならではのぬくもりがあり、贈り物としても喜ばれそうだ。