(玉名郡)
インタビュー記事(2010年頃)
その発想はどこから湧いてくるのでしょう。木彫家・
「もともと自然が好きで、生き物が生まれてくる最初のカタチに興味があって。木を毎日削っていくうちにアイデアが浮かんでくるんです」
刃物を使って木を彫刻するカービングで、さまざまな造形の可能性を追求してきた上妻さん。あるアメリカの雑誌に載っている古いデコイ(狩猟で囮に使う鳥の模型)に魅せられたのが、この世界に入るきっかけに。
24歳からナイフで木を削り始めるとのめり込み、今の仕事になっていたそうです。その活動は今や国内にとどまりません。フランスの芸術祭「Le Vent Des Forets」の出展者に選ばれ渡仏。約15日間かけて森の中で彫刻に取り組みました。これを機に知り合ったアーティストと共にフランスで作品展を、韓国のカフェでは個展も成功させています。そんな上妻さんですが、本人は親しみやすい熊本弁でユーモアを交えながら会話してくれるような、良い意味で“アーティストらしくない”人です。玉名郡和水(なごみ)町の山中にアトリエを構え、より自然を感じながら制作活動を続けてきました。「慌てずに、時間をかけて。楽しみながら出来れば、いいですね」
2008年には「MUSEUM KOZUMA」(予約制)をオープン。天井が高い真っ白な空間には、大小さまざまな作品が並んでいます。
上妻さんが使う道具は、おもにノミとナイフ。「最初にデザインを起こし、どこを残して、どこを削るかをイメージします」。材料には、国産の木を選びます。「基本は地産地消。いつでも手に入る木を使いたいと思って」
丸太の状態で手に入れて、みずからの手で加工。なるべく自然のカタチを残したいとの思いから。テーブルなどの家具はやわらかな曲線を描き、サイドに彫ったノミあとが味を出します。
「安価な家具が出回り、使い捨てが当たり前で、昔のように“次の世代まで使う”という感覚がなくなってた気がします。しかし、一方では小家族化でプライベート空間にこだわる人も。そんな方々に、作品を手にしてもらいたいですね」。