工芸家プロフィール
木工房ひのかわについて
インタビュー記事(2010年頃)
幼い頃、小さな家具工房で父が注文家具を作る姿を見て育った古島隆さん。
父の後を継ぎ、1990年に新しくショールーム併設の「木工房ひのかわ」を構えました。地産地消、お客様の顔が見える仕事がしたいとの思いから、地元を中心に注文を受けてきました。一般的な既製品と比べると決して安価とは言えないけれど、それでも予約待ちのお客様が途絶えず商品次第では半年待ちになることも。注文があれば小さな箸入れからテーブルやベンチ、箪笥など木で出来るものは何でも作ります。通常使う樹種は桜・楠・楓・胡桃・桐など約30種類、倉庫のストックは100種類以上。合板は有害物質の心配や耐久性に問題があるため、基本的に無垢材で作ります。ただし無垢の木材は生き物。空気中の湿気によって常に膨張・収縮を繰り返しているといいます。
「いつも木が動いている状態で作る訳ですから、例えばテーブルの天板などの場合、一度削ったら時間を置いてまた削るといった具合に養生を繰り返しながら時間をかけて作る事でより完璧に仕上がります」
“優れた家具”の要素は丈夫さ、使い勝手、美しさ、などがありますが、一番優先すべきは“丈夫さ”だといいます。木の組み方にはアリ組みやホゾ組みなどといった様々な仕口(工法)がありますが、適材適所で使い分けることでより頑丈になります。
「目に見えない隠れた部分にも送りアリ加工などを施して丈夫さを追求する。そこまでしないと私自身が満足できなくて」
明治や大正時代のタンスなどを修理再生する依頼も多いですが、そこから学ぶものは多いといいます。
「どれだけ技術があっても、良いモノを作ろうという“哲学”がないとダメです。当時のタンスなどを見ると、良くも悪くも作った職人の技能と人間性が見えますから、私も変なものは作れません。古くなっているけどしっかりとした責任感のある手仕事の跡を見つけると嬉しいですね」
オーダーの場合、樹種や塗装方法など選択肢が多いぶん迷う人が多いですが、価格も含めた適正なアドバイスをしています。
「予算に応じた提案もしますが、安いからといって責任をもてない家具は作りません。師匠からも“信用第一”と言われ続けていましたしね」
40年以上木に携わってきた自分の経験をもとに適材適所の木を選んでいく木取りが、古島さんにとって仕事の醍醐味。同じ樹種でも部所により向き・不向きがあるため、例えばイスの脚か背もたれかで使い分けるという具合です。木取りをしっかりしないと壊れやすくて使い勝手が悪く、しかも綺麗ではない家具になってしまいます。
「家具って何気なく買ってしまった後、気に入らなくてもなかなか捨てられないですから、本当に満足する家具を慎重に求め、愛着を持って永く使い続けてもらいたいですね。オーダーだと確かに市販の既製品に比べたらお高いのですが期待を裏切らないような価値あるものを作りますから、毎日気持ち良く使えて永く使えるのでお得なのですよ」
年間、数多くのオーダー家具を手がけますが、その一つ一つにお客様のこだわりや思いが詰まっています。
「お客様のご要望を詳しく聞いて自分の感性と培われた技術を活かし、お客様が期待されている以上のものをカタチにして驚いて頂いた時が一番嬉しいですね」
こうした隆さんのものづくりへの“こだわり“は、息子で3代目の隆一さんにも脈々と受け継がれています。