インタビュー記事(2010年頃)
薪の登り窯を収めた小屋の前には、釉薬の入ったバケツが無数に点在していた。息峠窯の主、岡田圭史さんは、鎌倉や室町時代の古陶をヒントに自然釉の焼物を研究してきた。「昔の焼物は薪窯を使って灰が器に降り掛かることで、自然にガラス質の膜となる自然釉となっていたんです。そうした昔ながらの焼物に魅力を感じて、自然界のものを使って釉薬を試してきましたが、見たことのない色の器が生まれたときは感動しましたね」。薪の灰に含まれるアルカリ成分と土の中のケイ酸分が化学反応を起こすと、ガラス状になる。釉薬の成分も、この化学反応を応用したものだという。岡田さんが釉薬の原料に使っているのは、木灰と石。天草陶石と同種の流紋岩などを用い、木灰は庭に植えたレモングラスやこの地方名産であるミカンの木など、その数なんと80種類にも及ぶという。「剪定や伐採された枝葉をたくさん分けてもらいますが、灰になってみると、ほんのわずか。ビワの木を軽トラック5台分もらった際も、出来上がった灰は17kg程度でした。」集まった木々を野外で2、3日焼き続けた後、残った炭火の