工芸家プロフィール
インタビュー記事(2010年頃)
緻密に計算された段取りと、それを根気強く続ける努力。高いプロ意識で焼物に取り組む福吉浩一さんの作品は凛として何事にも物怖じしないかのような風格と緊張感を放ちます。大学を卒業後、鹿児島県在住の日展作家・大畠久さんのもとで修行。「師匠は造形を追究される方でしたから、私もその影響を受けました」出身は鹿児島ですが、父の定年を機に熊本へ。母の実家がある菊池市泗水町で窯を開きます。福吉さんの焼き物は、一般的にはなじみの薄い炭化焼き締めという焼き方。釉薬をかけずに高温度による強い還元炎状態で
まるでコンピュータで描いたように等間隔で伸びる細い線、1本の線の中に10色ほどの粘土を埋め込み、色の配置を一線ごとにずらしながら、見事なまでのグラデーションを織りなしています。よく見ると器の曲線に従いながら線が中心に集まっているのが分かります。定規状の型紙を線ごとに作り、少しずつ太さや角度を調整しているので「粘土の配合で伸縮率が変わるため、これを統一しないと隙間やヒビ割れを起こしてしまいます。細か過ぎて途中でやめたくなることなんて、しょっちゅうですよ」福吉さんにとって、1にも2にも段取りが命。「焼物の都合に、自分が合わせているという感覚ですよ」象嵌以外にも力を入れているのが練り上げで、異なる色の粘土を貼り合わせ、ねじりを入れながら模様を作ります。中国の唐の時代に行われていた古陶磁であり、人間国宝の