インタビュー記事(2010年頃)
「ついつい趣味が長続きしてしまって」とにこやかな表情を見せてくれた、「坂下窯」の佐藤晃さん。ある陶芸教室でスタッフとして働いた経験はあるものの、「材料の準備など雑用的なもの」。材料を扱う業者と顔なじみになって焼物の知識を得たことをきっかけに、ほぼ独学で窯を開くまでに。結婚を機にスタッフの一員となった妻・明子さんの実家に自分たちで窯を造り、数年後に現在の場所へ。一見、民家として見過ごしそうな場所にありますが、ギャラリーの扉を開くとご夫婦それぞれの作品がにぎやかに出迎えてくれます。「自分が使いたいものを作っているだけ」と話す晃さんは奥様も認めるほどの料理上手。料理を盛りつけたときに映える色合いや、使い勝手を考えたデザインなど、実際に使う人のことを実によく考えてあります。常に新しい食器づくりに取り組んでいるため、「1年前に買った皿と同じものを欲しいと言われても、ないんですよ」と笑います。
一方、明子さんが作っているのは、愛らしい動物やお地蔵さんの置物。なかでも手のひらサイズのお地蔵さんシリーズは土台を晃さん、表情を明子さんが分業して作っても手が回らないほどの人気です。それぞれを見比べると、1体ごとに表情も体つきも微妙に違います。「お子さんを亡くされた方への贈り物にと選んでいただいたり。見ていて笑顔になる、癒されると言っていただけるのが嬉しいですね」イキイキとした表情を出すため、釉薬をかけずに磁器の焼締めで土味をそのまま生かしています。息もぴったりで手際良くお地蔵さんを完成させていく佐藤さんご夫婦。出来上がったお地蔵さんのように、終始にこやかな笑顔が印象的です。