インタビュー記事(2010年頃)
民家を改造して作ったギャラリーに、瓶の栓やホットカーラーを応用した文様付けの道具。「作りたいものは毎回変わってきますね。作った物に満足することはない」と語る玉名市在住の陶芸家・丸山修さんはアイデアあふれる人だ。釉薬を使わず高温で焼き上げた焼締の花器は、銀を吹き付けたような鈍い光沢を放つ。透かし彫りのランプシェードは光を通す穴の間隔が狭いため、焼成の際に割れないよう気を使う。ほかにも日常使いのコーヒーカップや飯碗など作品はさまざまあるが、使う土は7種類をブレンドしたものを。釉薬も鉄やワラなど、用途に応じて使い分けている。丸山さんが焼成に用いる倒煙式単窯は、両側から火をくべると天井に上がった煙が下へと回り込み、底の穴を通って煙突へと抜けていく。色ムラしにくいのが特徴だ。年2、3回のペースで焼き上げ、毎年4月末と11月末に窯開きが行われているが、「どんどん売れてくれれば焼く回数も増やせるんですけどね」と笑う。
「生活スタイルの変化で、ちゃんとした焼物を求められる方が少なくなりましたよね。使っていただけば、その良さが分かると思うんですが、ファンの方も大切に使って下さいますから買い替えというのも、そう多くはありませんし」
良い作品づくりを目指すからこそジレンマを感じている工芸家は、丸山さんだけではないだろう。現在、20窯元ほどが在籍している荒尾・玉名地域窯元振興会会長も務めている丸山さん。2002年からは、陶芸のユニバーサルデザイン(UD)化にも取り組んでいる。NPO団体などと連携して介護施設を訪問して使い手の声に耳を傾け、扱いやすくて使いやすい、UD陶器の開発を続けている最中だ。「本来、焼物というのは使う方のことを考えて作っているものですが、たとえばスプーンでもすくいやすいように返りフチの付いた皿など、使って“うれしか(嬉しい)”と思っていただける器づくりを目指しています」2011年4月以降はUD陶器を“うれしか(U)デザイン(D)陶器”という、会独自の呼び名に変えて、荒尾・玉名地域の窯元の作品を県外にも広くPRしていく計画だ。