工芸家プロフィール
インタビュー記事(2010年頃)
兄・日人詩さんが手がけるのは、
釉薬をかけないのが特徴で、薪を燃料とする窯で焼くことで素地に灰が降り掛かり、これがガラス質に変化して釉薬がわりとなります。この自然釉の付き方が作品に“景色”を付けていきます。
「焼き物を始めるとき、父からは“マネをせず自分でやりたいことを探しなさい”といわれました。そこで、私の場合は力強さと躍動的な魅力に惹かれて焼締を選びました」土は熊本で八代海に面した不知火へ出向き、自ら掘って精製。
「堆積層でできた土地で、昔から“瓦屋さんが集まる場所には良い土がある”といわれています。焼締の場合は土によって個性が出るので、土選びが重要なのです」窯焚き作業もかなりの重労働で、一度の窯焚きで体重が5キロ近くも落ちるそうです。日人詩さんみずから手作りした半地下式穴窯で4〜7日間、10分おきに30〜40本の薪をくべながら火を絶やさず焚き続けます。家族の協力なしでは出来ない作業です。
「長く焚くほど、灰のかかり具合で複雑な“景色”ができ上がります」窯は通常の倍近くとなる7メートルもあるので、置く場所によってバリエーションが広がります。
「焼締の場合、細かな色の付き方などは焼いてみないと分かりません。そこが難しくもあり、楽しくもあります。焼締がもつ“豪快さ”と、土のもつ“優しさ”をうまく融合させて、いろんな焼き方や形に挑戦したいですね」