インタビュー記事(2010年頃)
日当りの良い山の中腹で、水引・桜・ドクダミ・露草・アザミなど、工房のまわりに咲く季節の野花をモチーフにした花の器を制作する元田翔子さん。湯飲みやご飯茶碗、箸置き、コーヒーカップなど日常使いの器が中心で女性らしい柔らかな彩りのものが多いですが、同じコスモスの図案でもピンクや紫など、気分によって絵の具の色を使い分けるので違った印象を受けます。「だって、作っているほうも楽しみながら作りたいでしょ」と明るく笑う元田さん。また、元田さんは器の内側に絵柄を施しています。「お茶を飲み干したり、ご飯を食べ終わったとき、絵柄が見えたら楽しいから。深さのある器に描いてほしいと頼まれることがありますが、手の届く限り、対応しています」。
土は、赤みがある唐津のものをベースに白土をブレンド。きめ細かな粘土を真空土練機で自ら製造しています。この粘土を使い、茶碗や湯のみには器を回転させながら成型するロクロひき、皿などの平たいものは型に当てて作るたたらなどで素地となる器を制作。出来た素地に化粧土を施し、その後、干して適度に水分を飛ばし、白い化粧土が乾燥しかかったところを掻き落とすように、尖った棒で模様を描きます。すると化粧土を掻き落としたところから赤土が表れ、輪郭がはっきりと浮び上がります。これを素焼きした後、陶芸用の絵の具で花びらや葉の1枚1枚を描いて釉薬をかけ、本焼きに。工房にはガス窯2基と薪用の穴釜が1基。用途によって使い分けますが、絵付けの美しさを出すため、ガス窯で温度を管理しながら窯の中に酸素できるだけ入れない還元焼成が主だそうです。さらに食器用の漏れ止め剤を施すなど、使い手のことを考えて手間を惜しみません。