インタビュー記事(2010年頃)
ザクロの果実のように深紅の光を放つ、
辰砂は縁の部分が白くなるのが特徴で、他の釉薬で出す赤色と見分けるポイントになります。縁の白と本体にかかる赤のバランスも、辰砂を楽しむ一つの要素です。しかし発色が鮮烈なだけに、焼成が上手くいかないと色が剥がれ落ちたように見えて魅力が失われてしまいます。ちなみに銅を含んだ釉薬は、酸素が十分に行き渡る酸化炎焼成だと緑色に、逆に不完全燃焼で器を酸欠状態にする還元炎焼成だと赤く発色する性質をもちます。辰砂はこの還元作用を利用して美しい赤を引き出します。釉薬の調合、厚さ、素地土、焼き方という4つの条件がうまく揃って初めて良い色が出せるのです。「大変発色が難しいため、陶工が探り合いながら発展してきた焼物です。色の出し方は、どこに行っても秘密でしょう」世の中のニーズにあわせて、床の間に飾る大皿などから日常食器が主流となった。「人間の継続の在り方が変わってきたように思います。以前は先祖代々受け継いできたものも、今は自分の代だけで完結してしまう世の中。ですから、昔は歴史を重ねて骨董となっていく価値ある大作も邪魔者扱いされるのが現状です。焼き物を生業とする以上、売れる商品づくりを意識しないといけませんしね」店の奥には、2010年に亡くなった先代の大皿が鎮座しています。ただでさえ目を引く辰砂ですが、大作になるとその存在感は圧倒的です。還暦祝いの贈り物として、赤いちゃんちゃんこ代わりに