インタビュー記事(2010年頃)
焼締は釉薬や絵付けなどを施さないぶん、焼成が全てを決めます。土は1,300℃まで上昇する熱に長時間耐えられるものを三重県の伊賀から調達。使う窯は焼締に向いた半地下式穴窯です。通常の登り窯と比べて熱効率は良くないのですが、下の土全体を温めてくれます。長時間じっくり焼成した後、大地の湿気とともにゆっくりと冷めていきます。地上式の窯よりも時間がかかるぶん、他の窯では出せない微妙な風合いが生まれるといいます。そして焼成には、赤松の薪が欠かせません。火をくべて1分と持たない杉と比べて、赤松だと約3倍の時間火力を保ってくれます。「薪のくべ方や窯詰めが“景色”を作ります。火の回り具合を計算しながら器の置き方を決めますが、ある程度の色合いは出せてもなかなか思うようには出来ません」。長い年月数えきれないほどの焼締の器と向き合ってきた田原さんの言葉だけに、その奥深さを思い知らされます。焼締の他にも、倒炎式の単窯による炭化焼成の作品も手がけています。地元の土や鉄分を調合して生まれたチョコレート色に白く対比する象嵌のコントラストが、焼締とは違った魅力を醸し出します。香炉や一輪挿しなど、一つ飾るだけで華やいだ気分になれそうです。